第32話彼は学生時代を思い出すⅢ

あれ……この後……どうなったんだっけ?

 俺は微弱に残る記憶を手繰り寄せる。

 

 ——あれは寒い寒い日のことだった。

 

「しっかりしろ!」

 

 腹を切り裂かれた少女は弱々しい声を放つ。

 

「ごめんね……約束は守れそうにないや」

 

「純愛というやつかな? いやー、滑稽、滑稽」

 

 少年は五芒教ペンタクルの幹部の男を睨め付ける。

 

「この異常者が!」

 

 五芒教ペンタクル……従来の魔術に否定的な人間の集団。非人道的な活動を多く行なっており別名『人生の終着点』とも言われている。

 

「異常者で、結構です」

 

 男の握るナイフから滴る血は

ポタリ、ポタリとした垂れ落ち、地面を赤黒く染める。

 

「逃げて……」

 

「逃げない」

 

 少年は涙を流して少女の頬に触れる。

 

「ごめん。眠ってもらうよ『絶対零度アウズフムラ』」

 

 少年は少女の腹に手を置き氷のスキルを発動させる。

 

「気でも狂ったのですか? 自ら彼女の命を経つなんて。ククク。これは傑作だ!」

 

 少年は汚物を見るように男を睨め付ける。

 

「人生の中で度々繰り返される別れに抗うつもりはない。ただ、お前のような人の命を踏み台のようにしか思っていない人間はどうしても許せないんだよ!」

 

 少年は3つのネックレスを取り出す。

 

 『憑依ポゼッション

 

 少年の髪型が黄色、水色、灰色に染まる。

 

「『憑依ポゼッション重複リピット』体の負担は大きいが、この際仕方ない」

 

 そう言いながら少年は男に近づく。

 

 ——ここからの記憶はない。

 

 そうだ……1つ思い出した。少年はこの日から抹茶が飲めるようになったのだ……。

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