第27話彼は少女を担ぎながら、走り回る

「はぁ、はぁ……」


また、舞台は戻り……。

俺は、クラディアをおぶって走り回っていた。


「あのー、どうするんですか?」


クラディアが、俺に捕まりながら、そう聞いた。


「はぁ?そんなの分からないよ!」


俺の回答を聞いて、クラディアはありえないとでもいう顔をした。


なぜ、クラディアをおぶっているのかというのは、このような原因があるからだ。


“いつ、あの狙撃手がこちらを狙っているのかがわからない”。

そう、これだ。


俺はクラディアを守るために出来るだけ近くにいなければならないが、手を引くだけでは、到底逃げきれない。


もし、クラディアが狙撃され、地面に倒れた場合のロスを考えると、おぶった方がいいと思ったのだ。


「あぁ、惨めだなー」

という声が微弱に聞こえる。


「なっ!どこだ?」


俺は意識を集中させる。


(下か!)


俺は、地面を蹴って、宙に体を運ぶ。


破骨墓地ボーフウィスプ


そう、スキル名が聞こえたと思うと、地面から大量の骨が飛び出してきた。


「なっ⁉︎」


俺は、無意識にポケットから、薄緑色のネックレスを取り出した。


憑依ポゼッション!」


いつもの如く、俺の髪と目は変色する。

今回は、新芽のような透き通った緑色に変わった。


(僕の出番なのか?)


(あぁ!任せる)


「よーし!いっちょやりますよ!」


こいつは、聖騎士龍“突風神龍ボイシャーデマルス”

幼い口調が特徴の聖騎士龍だ。


基本的には、龍に体の感覚全てを預けるのは、しないのだが

……場合が場合だ。

そんなことを思いながら、俺は聖騎士龍に意識を委ねた。


無慈突風クルレウインド


デマルスが起こした風のおかげで、スキル圏外に移動できた。


(どうしたら?)


やはり、クラディアをおぶりながらの戦闘は出来るだけ避けたい。


俺は、地面に着地して走り出す。


(なんとか、クラディアを戦闘から遠ざけねば!)


その一心で、俺は走り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る