第26話少年は“影の支配者”の称号を得る

「殺れ!メクリヤ!」


「任せな!」


一方教室では、セイルとメクリヤの猛攻が繰り広げられていた。


((無理だ……))


他の生徒たちは、思い知らされたのだ。自分たちが、無力であることに。

彼らは、セイルとメクリヤしか動き出せなかったという劣等感と、今もなお動けないという屈辱に晒されていた。


女は、圧倒的なスピードで、2人を翻弄する。


「ちくしょう!」


メクリヤは、ただでさえ重たい盾を振り回しているため、だんだんとバテ始めていた。


「はぁ、はぁ」


その隙を、女は見逃さなかった。


衝撃バン


メクリヤの腹に添えた腕から『衝撃バン』が発動する。


「ガハ!」


メクリヤは血を吐きながら、壁にぶつかった。


「メクリヤ!」


セイルは、敗北を悟る。


(負ける!死ぬ!)


セイルは、そう思い銃を落としかける。


(駄目だ!足掻け!足掻け!俺は、ガンスレンダー家の長男だ!)


セイルは、拳銃の銃口を、女に向ける。


「遅いなー、遅いなー。無力なガキが、プライドを背負っているんじゃないよ!」


セイルは自信の死を悟る。

なんせ、自分の頭を鷲掴みされたのだから。


「ばーい」


どんなは息を吸い込んで呪文を唱える準備をする。


『バンっ』


空想世界クリエイツワールドパニッシュ


フーディアン・スケイスのスキルが発動する。


「なっ!なによこれ!」


女はセイルを離して、うずくまる。


「来ないで!」


スケイスはコツコツと音を出しながら、女に近づく。


「ククク。苦しめ、苦しめ!最高の絶望を、あなたに提供しよう!なーに、お題は結構だぜ」


フーディアン・スケイス…スケイス家の次男。

人の苦しみを傍観して、楽しむというねじれた性格の持ち主だ。


悪夢幽界ナイトメアテラー


悪夢幽界ナイトメアテラー…スキルを発動させた対象が失神するまで、悪夢を見せ続けるスキルだ。


「ぎゃー!殺される!殺される!あっ……」


絶叫に絶叫を重ね、女は失神した。


周囲の人間はこう思った。

(こいつは、ヤバイ奴だ)と。


「ふぅ。ご視聴ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」と、スケイスは女に言った。


「グランツ」


スケイスは女に背を向けてグランツを呼ぶ。


「はい!」


グランツはなぜ指名されたのかわかっていない様子だった。


「縄」


「はい?」


「だから、縄をよこせって!手足を縛るんだよ」


そう聞いて、グランツは「あぁー」と、声を漏らした。


「ほらよ!」


グランツは縄を10秒弱で描き上げて、それをスキルで具現化させる。


「サンキュー」


この世界は意外と、物騒なようだ。

スケイスは“影の支配者”である。

そう思わせるようなインパクトのある少年だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る