第21話彼は保健室で目を覚ます

「はっ⁉︎」


俺は保健室のベッドで目を覚まし、バサリと布団を翻す。


周りには誰もいない。


「アイタタタ」


誰もいないはずの保健室で痛みに悶絶する女性の声が聞こえる。


「ん?あぁ、ヘルシア先生でしたか?」


「そうですよ!ピチピチの20歳のヘルシア・メルティーノです」


ちなみに彼女は31歳だ。

つまり、俺より1歳年下であると言うことか。


「で?何してたんですか?」


「え⁉︎いや、何もしてないですけど?」


ヘルシア先生はビクリと震える。


「何もしてなくて俺に頭突きされるはずがないでしょう!」


俺は本気で何をしていたのか聞きたくなって布団から飛び起きる。


「ダメですよ!まだ寝ていないと!」


俺はフラリと体勢を崩してヘルシア先生に激突する。


「イッタ!」 「キャ!」


俺たちは各々の激突箇所を抑える。


「ほら!ベッドに戻ってください!死にかけてたんですよ!命は一つしかないんですから」


そう言う彼女は少し泣いているようだった。

昔を思い返しているのか、ぶつかった事がそんなに痛かったのかは分からないが、彼女は泣いていた。

その顔を見て俺はベッドに戻る。


「はぁ。そうだ!クラディアはどうなりました?」


俺はまだ、激突箇所を抑えているヘルシア先生にそう聞いた。


「クラディアさんは、生きてますよ。現在はサテリドイド魔術病院に搬送されています」


俺はそう聞いて安心した。


(アイツに礼を言わないとな)


俺はそんなことを考えていたらまた眠気が襲ってきた。


(もう少し、寝るか)


クラディアが生きているとわかって安心したのか俺はすぐに眠りに落ちた。

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