第17話彼は生徒と龍のマンツーマン指導を横目で見るⅤ
鳥のさえずりが聞こえるのどかなテラス。
「美味しいお茶だこと」
俺はそこでお茶を飲んでいる女子生徒を見かけた。
「おい、練習は?」
俺は彼女と対面して座る。
「あら?これは先生方でしたの」
1年8組7席シェルディ・メイデザー……。
スキル『ティータイム』……。紅茶を飲んでから5分間動体視力が上昇する。
俺は彼女のお茶を見る。
「綺麗なお茶だな」
「お分かりいただけますの?」
彼女の目がキラキラと光る。
「いや、そのまんまの感想だ。平民の俺には貴族のお茶は分からないよ」
「そうですか?貴族から見たらこのお茶は濁っていると言われました。良かったら、お飲みになります?」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
(本当に、この世から貴族を排除したい)
グランツのような平民が伸び伸びと生きていけないのも貴族のせいだ。
もっというならクラディアだって貴族の落ちこぼれと言われているのだ。
「平等な社会ってなんなんだろうな?」
俺はそうぼやきながら彼女に入れてもらった紅茶を飲む。
「《ラウンドテイブル》平等という理念をもとに作られた魔術国家。だけど、貴族がいる。わからないですわね」
「そうだな。お茶、美味かったぞ」
俺はテラスで一息ついて新たな生徒の元へと向かう。ん?違う、違うこいつも生徒だ!
俺は首を振って彼女に向き合った。
「どうされました?」
「練習は?」
俺はなんとか思い出した。
(危ない、危ない。美味い茶に流されて彼女のサボりを見逃すところだった)
俺は彼女に手を差し伸べる。
「どうされましたの?」
「ネックレスを出せ。お前に渡したネックレスは聖騎士龍の中でも上の上の実力者だ。真面目に練習しないのなら返してもらう」
こいつに渡したネックレスは聖騎士龍の統率を測っている龍とコンタクトをとるネックレスだ…。
そいつの名前は“海神龍トライデント”。敵の攻撃を全て回避するほどの動体視力を持ち、さらに回避すればするほどの身体能力が上昇するというチートスキルの持ち主である。
「でも、私のスキルはお茶を飲まないと」
俺は首を振る。
「甘いな!何のために“トライデント”をお前に付けたと思っているんだ?お茶を飲まなくてもその状態にできるようにするためだ!」
「それは、どういう?」
「つまりだ、スキルというのはあくまでも支えに過ぎない。お前自身が強くなってこそ初めてスキルは輝くんだよ。お前の通常時がスキル発動時の時と同じになればどうなる?」
「え?そんなのめちゃくちゃ強くなるに……そう言うことですか?」
「わかったか?お前はそれだけ可能性に満ち溢れているというわけだ」
「わかりました。がんばります」
「本当にわかっているんだろうな?」
俺はそんなことを言いながらトライデントに語りかける。
(ちゃんと見守れよ)
(いやーボインが)
(ふざけるな!龍にとって巨乳も貧乳も関係あるか?)
(はい)
俺とトライデントはこんな仲である。
よく、巨乳好きのトライデントのストッパー役を務めさしていただいた物だ。
(とりあえず、ちゃんとやれよ)
(あぁ、任せておけ)
任せられないと思いながら俺はシェルディの方へと体を向ける。
「まぁ、頑張るも頑張らないもお前自身だ」
俺はそう言い残して別の生徒の元へと向かった。
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