第10話彼は少年時代を思い出すⅦ

「『氷山一角音響グレードシェイドバグパイプ』」


ワンプスはバグパイプをまるでハンマーのように使う。


(物をもっと大事にしろよ!)


ここでも、俺の声は届かないようだ。


「『全力光玉マテシカルディライト』」


1匹の龍と一人の半龍半人の攻防が俺の意識下で勃発している。


「戦友よ!もっとあげられるな?」


セイズはなんとも楽しそうだ。


「残念だが、お前のように俺様は熱い男じゃないのでな」


「そうだな、貴様に熱いという言葉は似合わないな」


(おい!おいって!)


俺はなんとかワンプスに聞こえるように声を張り上げる。


(なんだ?今いいところなんだ!)


ワンプスは戦いながら意識に侵入してきた。


(器用だな。それどころじゃない!歩兵軍がもうそこまで来ている。俺の自立型ドローンからの情報だ!)


「何?」


ワンプスは声に漏らしてしまった。


「どうした?」


「歩兵軍がもうすぐそこまで来ているそうだ」


「なんと!」


(ワンプス、変われ!お前には攻撃を担当してもらう!)


(なぜだ?)


(お前が龍の姿の状態と思っているかも知れないがその体は俺のだ!お前はセイズの攻撃を体で受け止めているんだ!声には出していなかったが、メチャクチャ痛いんだよ!)


(そうか、わかった。攻撃を俺様がやったらいいんだな?)


(でも、使用するのは右手のみだ!)


(なぜだ?)


(万が一の場合盾を出したいからだ!)


「了解。『変化コンヴェルスィオン』」


俺はやっとの思いで自分の体を取り返した。


「一発で決めるぞ!セイズ!お前に完璧な敗北を与えてやろう!行くぞ、ワンプス!」


(おうよ!任せな!)


「楽しみだ!では、悔いの残らないように我も全力を出さしていただくとしようか!」


(全力を出していいんだな?)


「かまわない!俺の髪の毛が白髪になっても、目が水色になっても何になってもかまわない!」


俺はハッキリと言い切った。


(ククク、セイズの奴め!あれを使う気か?)


「あれってなんだ?」


「これのことだ!」


セイズはそう言って剣を盾に刺した。


「『光神剣斧斬撃破こうしんけんぷざんげきは!』」


セイズの放った斬撃破はゆっくりと俺らとの距離を詰める。


「俺らも行くぞ!」


(任せな!

冷酷打撃反響波れいこくだげきはんきょうは!』)


ワンプスが俺の体を使って放った音響波はキーンと人間の嫌いな音を立てて空気を揺らす。それは陽炎のようだった、


「全ドローン起動!『魔力増幅陣!《フォルテジク》』」


「はぁーー!」


「おりゃーー!」


俺とワンプスの合技はセイズの斬撃破とぶつかる。


キンキンキンと金属反響のような物が一段と強くなる。


その周波数の高さに俺は意識を失った。

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