第9話彼は少年時代を思い出すⅥ

俺は意識はあるのに体が動かないという感覚に襲われる。


「久しいな。160年ぶりか?」


ワンプスが俺の体をのっとったようだ。

水溜りに映る俺は俺ではないようだった。


目は黒目から水色に、髪の毛の一部は茶髪から白色に変色していた。


(なんだよこれ!)


俺の声はワンプスには届かない。


「戦友よ、何処へ行っていたのだ?」


「俺様はもうこの世界にはいない。正式にはこいつの血液の一部になっていると言った方が正しいかな?」


ワンプスは訳の分からないことを言っている。


(待てよ?血液の一部?つまり、俺は自分の血液だと思っていた血液はブリザードワンプスの物だったということか?なんだよそれ!)


俺は必死に自分の体を取り返そうとする。


「こやつの血液になったのは爾の意思か?」


ワンプスはニヤリと笑う。


「あぁ、


「なぜこやつに血を与えた?」


セイズはさらに質問を続ける。


「こいつがだったからさ」


「と言うと?」


「俺様と似ていたのさ。冷酷な俺様とな」


「理解したり」


「俺様は運命だったんだ。こいつもな」


(俺が死ぬ運命だった?)


俺は自身の幼い記憶を呼び起こそうとするが全てに霧がかかっている。


「こいつは死にかけの俺に手を差し出して、一緒に生きるか?と言ってくれたんだ。嬉しかった。こんな化け物の俺と共に生きても良いとこいつは思ってくれた。たとえ、幼い時代の無垢な同情だとしても、俺様は嬉しかったんだ」


ワンプスは俺の髪の毛を完璧な白髪に変える。


「俺様はこいつを死なせたくない!だから俺様は、お前をここから離れさす必要があるんだ!」


ワンプスは右手を鷲掴み前のような形に変化させる。


「承知した。だが、我ら聖騎士龍の間の掟を忘れたわけではあるまいな?」


セイズは鞘に納めていた剣を抜く。


「あぁ、別れの前は今までの思い出を心に残すために最後に一発殺り合う!」


ワンプスが空間からバグパイプを取り出す。


(そのゲートはなんだよ⁉︎)


「やるか!ルールはどちらかが参ったと言うまでだ!」


「良いぜ!存分に殺り合おう!」


こうして俺が意識の中で見守る中で、2匹の龍は武器を、呼吸を、想いを、そして思い出を一つに交えて戦うのだ。心に刻むために。

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