第7話彼は少年時代を思い出すⅣ

「『腹痛連射式アフラ・スタマツ!』」


「おっと危ない、『瞬間発光マガン・デライト』!」


俺とセイズは互角の勝負だ。


「ククク。もっと楽しませろ!我の体はやっと温まってきたところだぞ!」


(こいつー、俺で遊んでやがる!)


俺はもう少し本気を出すことにした。


「じゃあ、冷やしてやるよ!吹雪さかんな冷山の守護者よ、我に力授けたもう

氷結危機ブリザードクライシス』」


「む?これはあいつの……」


セイズの動きがピタリと止まった。


「くっ!」


止まったままセイズの足は凍りつく。


「貴様がなぜその魔術を使えるのだ⁉︎」


俺はセイズが何を言っているのかわからなかった。


「それはどういうことだ?」


「貴様の中にいる奴が知っているのだろ

う?」


「俺の中?知らないな。俺は俺だ!それ以上でもそれ以下でもない。それはこの先変わることもないし、誰かに変えられることもない」


俺はポリポリと頭をかく。


「くっ!わからぬか?貴様には何も感じ取れないとでも言うのか?」


「何が感じられるんだ?俺は自身の魔術の反動で少し寒さを感じるぐらいなのだが?」


セイズはハッと顔を上げる。


「そうか!もう、そこまで来ていたか。今、助けてやるからな。『共鳴ドラゴンコール』」


俺は全く理解できなかった。


セイズが何を理解し、何を呼び起こそうとしているのかを。


突如頭の中で龍の雄叫びが鳴り響く。


「くっ!」


俺は頭を抑える。

「なんだ?」


「やはり」


薄れゆく意識の中で俺は涙を流すセイズの姿を見たのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る