第5話彼は少年時代を思い出すⅡ

「撤退しましょう。もう、持ちません!」


正直、歩兵ではあの龍に傷一つ与えることはできないだろう。


何故なら、聖騎士龍の持つ武器はダイアモンドの30倍の硬さを誇るのでは無いかという研究結果が出ているからだ。


「君、危ないぞ!早く逃げなさい!」


歩兵隊の隊長と思われる人が俺に話しかけてきた。


「戦闘中によそ見は禁物ですよ!終焉へと万物を呑み込め!『終結ディマイズ門前ゲート』」


俺は聖騎士龍が攻撃してくるのを予測していたので、すぐに対応することができた。


『ディマイズゲート』は相手の攻撃を一度だけ無効にする技である。


俺は隊長を瓦礫の影に引きずり込む。


「逃げて下さい。あなたたちが勝てる見込みは限りなくゼロに近いです。無駄な犠牲は出したくありません」


「くっ!しかし!」


「早く決断して下さい!このまま味方兵を犬死させるおつもりですか?」


「我々の精鋭部隊が数十秒でやられたのだぞ⁉︎君みたいな子どもに勝てるはずがないだろう!」


「大丈夫です。精鋭がなんだかとおっしゃられていますが、所詮は歩兵。戦略の盾にしかならない部隊編成など、無力に等しい」


「我々を馬鹿にすると言うのか?」


「いえ、全くそのようなつもりはありません。ただ、無駄な犠牲を出したくないだけです」


必然と冷たい言い方になってしまった。

だが、仕方ないことだ。


「僕にだって時間稼ぎぐらいはできます。その間に援軍をお呼びください」


「くっ!」


隊長は大通りに出て部隊の生き残りに向かって声を張り上げる。


「撤退!」


歩兵たちが助かったというような顔をする。

「危ない!」


俺は大通りに飛び出して魔術の詠唱をする。


「闇の支配者よ、闇の盾を作りて我らを守りたまえ!『光源消滅ライツブレイカー』」

俺はあの聖騎士龍が発光することを知っていた。


このタイミングをあいつは狙っていたのだ。


「間に合った!」


僕が後ろを向くと歩兵たちはもう村から出たようだ。


「さてと。これで本気を出せそうだ」


ここまでお膳立てをして俺と聖騎士龍の戦闘が幕を開けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る