第4話彼は少年時代を思い出すⅠ
これは、俺が15歳の時の話だーー。
俺はのどかなファミンコルムと呼ばれている村で夏休みを暮らしていた。
農業が盛んだったこの村はここらの都心部とは違ったが、伸び伸びと暮らすことができていたように思える。
だが、そののどかな暮らしは瞬く間に破壊された。
「なんだアイツは?」
大きな盾と剣を持った輝かしい龍が異空間の扉のようなものから飛び出してきた。
大きさはそれほど大きくない。
10メートル級ではないにしろ、2、3メートルはあるだろう。
「逃げないと」
俺は周囲にいた小さい子供たちを3人担いで早くあの龍から離れようとした。
「おにぃー。あれなに?」
「知るか!向こうを見るんじゃない!」
こんなところでトラウマを作られても困るので、俺は全速力で走る。
「聖騎士龍が出たぞ!殺れ!住民の被害を最小限にするのだ!」
俺の地区は《危険区》と呼ばれている地域に隣接していていつも危険なモンスター達がやってくる。
それを食い止めるのが《人の壁》と称される歩兵軍隊だ。
「行くぞ!」
「おぉ!」
《人の壁》達があの龍に向かって突撃する。
「おにぃーあの人達かっこいいね」
俺は彼らの末路を知っていたのだ。
「見るな!耳を塞げ!」
「えっ?」
そう疑問に思いながら少年は後ろを振り返ろうとする。
「見るな!」
「うん」
少年は頷いて耳を塞ぐ。
「隊長!無理です」
「うろたえるな!」
「このー」
兵士たちの悲鳴が飛び交う。
「くっ!」
俺は自身の村が血で染まることを恐れた。
(どうする?今なら救える命もあるだろう)
「お前たち」
「どしたの?」
「村の外に走って逃げろ!」
「おにぃは?おにぃも一緒に」
そう言いながら子どもは俺の袖を引っ張る。
「早く!」
俺の手を離した子ども達は、俺のことをチラチラと見ながらだったが、村の外へと走っていった。
(折角の夏休みが台無しだ)
当時の俺はゲニー魔術学園に在校していて、この時はちょうど夏休みだった。
(じゃあ、いっちょ捌きますか?)
俺はそんなことを考えながら聖騎士龍の元へと駆け出した。
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