【短編】仕返しをしに来た

波瀾 紡

【1話完結短編】仕返しをしに来た

 大学2年の夏休みを目前に控えた頃のことだ。

 俺は大学の同級生の女子に「付き合ってほしい」と告白された。


「今は……付き合えない」


 その子はまあまあ可愛いし、性格も悪くない。

 普通に考えれば、付き合いたいレベルの子ではある。

 だけど俺は、そう断った。


「好きな人がいるの?」

「いや……そういうわけじゃないけど……」


 ホントは、そういうわけなのか、そうじゃないのか、自分でもよくわからない。

 俺は高校時代に好きだった子が未だに気になって、他の人と付き合うなんて決断ができないのだ。

 その人を今でも『好きな人』と呼べるのかと言えば、そこは迷うところなのだが。


「わかった……」


 彼女は悲しそうな顔でそう言った。


「ごめんな。」

「ううん。でも私、たく君が振り向いてくれるのを待つね」

「あ……ああ」


 なんていい子なんだ。

 こんなありがたいことを言ってくれるのに、曖昧な返事しか返せない俺は酷いヤツだと思う。


 しかし──


 高校時代に好きだった同級生の「さき」は、俺がいる東京からは遠く離れた故郷で大学に通っている。高校を卒業してからは、去年夏休みに帰省した時に一度会ったきりだ。


 そんな関わりの薄い子のことをいつまでもうじうじと気にしてるなんて。

 咲のことを吹っ切らないと、このままでは俺は一生女の子と付き合えない。

 俺はそう悟って、想いを断ち切るために夏休みに帰省することにした。






 咲は顔はとても整っていて美少女なのだが、理屈っぽく性格も私服も男っぽい。可愛いと言うよりカッコいいと言った方がしっくりくる。

 異性というより親友という感じで、俺は咲と仲が良かった。きっと咲の方も同じく、俺を異性というよりも親友と思ってくれていただろう。


 だけど俺は、彼女のことを間違いなく異性として好きだった。しかし告白どころか、そんな素振りも一切見せることはしなかったけど。


 万が一フラれて、咲との『親友という関係』が壊れるのが怖かったからだ。



 大学が夏休みに入って故郷に帰った俺は、咲の家の前に立っていた。

 突然の来訪だが、家にいればきっと咲は歓迎してくれるだろうという思いはある。

 もちろん、高校時代の親友として。


 恐る恐るインターホンを押すと、幸い咲は在宅していた。

 突然の俺の来訪にとても驚いた咲だったけど、予想通り彼女は笑顔で大歓迎してくれた。


「どうしたの、たく!? 久しぶりだなぁ! まあ上がりなよ!」


 男っぽい口調。

 栗色のショートヘアに、Tシャツ、パンツスタイルのファッション。


 相変わらず男っぽい感じだが、その笑顔はやはり相変わらずとても美人だ。

 すっと尖ったあごに、通った鼻筋。

 長いまつげで、綺麗な二重のきりっとした目つき。


 久しぶりに咲の顔を見て高鳴る胸の鼓動を抑えながら、俺は咲の後ろについて2階の彼女の部屋に上がった。


 咲の部屋には高校時代に、何度か訪れたことがある。

 しかし密室に高校生の男女が二人きりでいたにも関わらず、俺たちは『男女の関係』になることはなかった。

 ──そんな雰囲気になることすら、なかったのだ。


 俺と咲は再会を喜び合い、そしてしばし思い出を語り合った。

 高校時代のバカ話。失敗談。

 そんな話が次から次へと湧き出して、話題に事欠くことはない。


 そして話題は俺が東京のどこに住んでるかとか、今現在の話になった。

 そう言えば俺たちは連絡先を交換してなかったから、俺の東京での暮らしぶりはほとんど咲に教えてなかった。


 そんなことにお互いに今さら気づいて、改めてスマホの連絡先交換をしようと咲が言った。

 なんだか改めて連絡先交換をするなんて、ちょっと照れる。


 いや……今さら気づいた、なんてもちろん嘘だ。


 俺は高校を卒業してからスマホを持った。だから東京に引っ越す直前に、咲と連絡先の交換をしようかと何度か考えた。

 しかし叶わぬ恋の相手の連絡先は、単に未練を長引かせるだけだと思ってあえて聞かなかったのだ。


 その時は咲の方からも、連絡先を交換しようとは言ってこなかった。

 あの頃の咲にとっては、俺はどういう存在だったのだろうか。


 もちろん、やっぱり、親友と思ってくれてたのだと思うけど。


 俺はふと会話の切れ目に、ボソッと咲に問いかけた。


「俺たちの関係って……」

「親友だよね」


 咲は即答する。

 それは、まるでこの話題を拒否するようにも思えた。


「そう言えば今夜は町の夏祭りだ。一緒に行かないか?」


 ふと思い出したように咲はそう言って、話題を変えた。


「ああ。昔はよく一緒に行ったな。懐かしいな」

「だろ?」


 咲も嬉しそうに、ニヤッと笑う。

 夜に神社で待ち合わせをすることに決めて、俺は一旦実家に帰ることにした。




 そして咲との待ち合わせの時間になった。

 待ち合わせ場所に現れたのは──


 今まで見たこともないくらい女の子らしい、浴衣姿の咲だった。

 赤い柄の浴衣にピンク色の帯。


 そんな咲の姿はあまりに可愛くて、俺は思わずぽかんと口を開けて見入ってしまう。


「咲……まるで女の子みたいだ」

「バカやろう。ボクだってたまにはこんなカッコもするんだよ」


 顔を真っ赤にして、咲は視線をそらした。

 ちょっと失礼なことを言ってしまったと後悔する。


 俺たちは夜店が立ち並ぶ神社の境内を見て回った。

 わたあめ、金魚すくい、お面。

 縁日定番の店を堪能する。


 やがて少し歩き疲れて、俺たちは並んで、神社の拝殿の石段に腰掛けた。

 二人して縁日の喧騒をぼんやりと眺めながら、取りとめのない会話にふけっていた。


 そういえば、咲には彼氏はいるのだろうか?

 今さらではあるけど、もしも咲に彼氏がいるなら、俺と祭りに出かけて、誰か咲の知り合いに見られたらエライことになる。


「なあ、咲。お前、彼氏いるのか?」


 訊きづらいはずのことなのに、俺はついそんな質問を口にしていた。


「いないよ。こんな男っぽい女子を好きになる男子なんていないだろ」


 咲は苦笑いして、自嘲するように言った。

 首を横に振ったのに合わせて、栗色のショートヘアがふわりと揺れる。


「今日みたいなカッコしてたら、引く手数多あまただろ?」

「バカか拓は? 毎日浴衣を着とけってか?」

「そういう意味じゃねぇよ。そういう女の子っぽいカッコって意味だよ」

「わかってるよバカ。拓こそ彼女いるのか?」


 横にチラッと視線を向けると、そう言う咲の首筋は、なぜか真っ赤に染まっている。

 どう答えようかと迷ったが、この質問を先に投げたのは俺だ。

 素直に本当のことを答えるべきだと考えた。


「いねぇよ。だけど最近、大学の同級生の子に、付き合って欲しいって告られた」


 こんな話を聞いて、咲がどんな顔をするのか。俺は気になって彼女の顔を覗き込んだ。

 咲は一瞬引きつった顔をした──ように見えた。

 いや、そんな気がしたけど、それはきっと気のせいだったのだろう。


 咲は俺の顔を真顔で見返して、訊いてくる。


「その子は、女の子らしい可愛い子か?」

「ああ。まあ……そうだな」

「拓はいかにも女の子っぽい子が好みだって、前から言ってたもんな」

「まあな」


 好みのタイプと実際に好きな人が違うことなんて、よくあることなんだろう。

 俺はあんまり女の子っぽくはない咲のことが、ずっと好きだったのだから。


 そんなことを考えていたら、突然咲が満面の笑みで大きな声を出した。


 「おめでとう! 今度ボクにも紹介しろよ」


 そして俺の頭にヘッドロックをかましてくる。


「おいこら、やめろ咲! いてぇだろ!」

「うっせぇ、この幸せモンが!」


 せっかくの可愛い浴衣姿で、ヘッドロックをかけてくるなんて、なんてヤツだ。

 だけど……咲の甘い体臭がふわりと鼻に届き、俺は頭がくらくらした。





 祭りからの帰り道。

 夜道を歩きながら、俺は咲に、ポツリと尋ねる。


「さっきおめでとうと言ってくれたから、咲の承諾を得られたってことでいいよな?」

「なんだよ? 拓が女の子と付き合うのに、ボクの承諾がいるのか?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」

「じゃあ承諾しない!」

「えっ……?」


 驚いて咲の方を見ると、咲は真っすぐな目で、しばらく真顔のまま俺を見つめていた。


 そして突然ニヤっと笑う。


「冗談だよ。おめでとう拓!」

「なんだ冗談かよ。一瞬心臓が止まるかと思ったよ」


 本当に心臓が止まるかと思った。

 咲が実は俺を好きで、だから承諾しないのかと勘違いしてしまった。


 俺が目を丸くしているのを見た咲は、お腹を抱えて笑い出した。


「だよね。せっかくの可愛い彼女と付き合えなくなるなんて、心臓が止まるよね、アハハ」


 ──いや、そうじゃないんだけど……


 咲は勘違いしているけど、まあいいか。

 コイツは俺が他の女子と付き合うことを承諾し、祝福してくれた。


 これで俺も吹っ切れた。

 咲への想いを断ち切れた気がする。


「ありがとうな咲」

「何が?」

「色々だよ」


 咲はきょとんとしている。

 そんな顔が、とても可愛く見えた。


 しかし俺も彼女ができたら、来年からはその子と一緒に夏祭りに行くんだろうなぁ。


「もしかしたら俺たちが一緒に行く夏祭りは、これが最後……かもしれないな」

「そうかもな」

「寂しいな」

「バカ。拓は今後は彼女と行けばいい。寂しくなんかないはずだ」

「いや……寂しいよ」


 別に浮気心ってわけじゃないと思う。

 今まで一番の親友だった咲と、これからは自由に一緒に行動できなくなるのが寂しいんだ。


 そんなことを考えていたら、いつの間にか俺は無言になっていた。

 咲も何も喋らない。

 二人とも無言のまま、じゃりじゃりと足音を鳴らして、暗い夜道を歩いた。


 ──遠くで花火の音がした。






 東京に戻ってしばらく経ったある日。

 突然咲からの電話が鳴った。

 東京に来てるから会いたいと言う。


 咲が東京に来るなんて珍しい。

 何があったんだろう?


 不思議に思ったが、せっかく咲が東京まで来たんだ。

 お茶でも飲もうという話になって、俺の家の最寄り駅で待ち合わせをすることになった。




 待ち合わせの駅前に着くと、もう既に咲は待っていた。


 その姿を見て驚いた。


 白いデザインブラウスに紺色のミニスカート。そしてピカピカ光る少し厚底の靴。

 すらっと長い脚がさらに美しく見える。


 いつも男っぽいTシャツ・パンツスタイルの咲なのに、今日はとても女の子らしい姿だ。

 元々かなり美人なだけに、そんな恰好でいると、そんじょそこらのアイドルにも負けないくらい輝いて見える。


 俺たちは駅前にあるスタバに入った。


「さすが東京。お洒落な店だな」

「何を言ってるんだ咲。スタバなんて俺たちの田舎にもあるぞ」

「そ、そうなのか? 知らなかったよ」

「とは言っても県庁所在地の近くだから、俺たちの家からはかなり遠いけどな」

「そ……そうだろ? どうりで見たことがない店だと思ったよ、アハハ」


 ぱっと見は東京のど真ん中に立っていても遜色がないくらいの美少女なのに。

 言うことが田舎っぽくて、ちょっと可愛いと思ってしまった。


「ところで咲、どうしたんだ? 東京に遊びに来たのか?」

「遊びに……ってわけじゃない」

「じゃあ、何か用事か?」

「うん、用事。野暮用ってヤツ」

「野暮用? なんなんだよ、野暮用って?」


 野暮用で、わざわざ何時間もかけて東京まで出てくるか?


「うん……仕返しをしに来た」

「仕返し!? 誰に? なんの?」

「内緒だ」


 咲の言うことが謎だ。

 仕返しって、なんなんだよ?

 誰かに復讐をしに来たのか?


 気になるが、咲に何度訊いても『仕返し』の中身は教えてくれない。

 それから雑談を初めて、あっという間に一時間が経った。


 そろそろ帰ろうかという段になって、俺は気になっていたことを改めて訊いた。


「なあ咲。さっき言ってた、その『仕返し』とやらはもう済んだのか?」

「いや、まだだ」

「なんだ。それがメインで東京に来たんだろ?」

「ああ、そうだよ」

「これからどこに行くんだ? その『仕返し』はこれからするのか?」

「ああ、そうだ」


 そう答えたきり、咲は視線をテーブルに落としてしばらく考え込んでいた。

 そして突然咲は視線を上げて、きゅっと俺を睨んだ。


「なあ拓。一発殴らせろ」


 咲は真顔だ。


「もしや、とは思ったけど。仕返しの相手って俺か?」

「そうだよ」

「なんで?」

「内緒だ」


 理由を聞いても教えてくれない。


「咲の言う仕返しって、殴ることなのか?」

「そうじゃないけど、今回はそれで手を打っとく」

「手を打っとくってなんだよ。そうじゃないなら、ホントにやりたい仕返しをしろよ」


 咲が言ってることが全然わからないし、俺が何の恨みを買ったのかもわからない。

 だけど咲が俺に仕返しをするって言うなら、それは相応の酷いことを俺がしたのだろう。

 それならば俺は、咲が気の済むようにしてあげたい。


 そう思ったから、俺はそう提案したのだ。


「いや、拓が困るからいい」

「なんだよ、困るって」

「内緒だ」

「言えよ」

「内緒だ」

「咲が俺を殴って気が済むならいいけど……」


 俺がそう言うと、咲は無言でいきなり思い切り拳を振り上げた。


(ヤバっ、殴られる!)


 俺は覚悟して、逃げることなくその場で目を瞑った。


 コツンと頭を拳で小突かれた感覚がした。

 まったく痛くもかゆくもない。


 俺は目を開けて咲を見る。

 口を尖らせて、ちょっと泣きそうな顔をしている。


「そんなんでホントに気は済んだのか? もっと思いっきり殴れよ」

「いやいいよ。本気で拓を殴るなんて、やっぱりできない……」


 ホントにワケがわからないな。

 でも咲が、本音を隠してることくらいはわかる。


「なんだよ、本音を言えよ。ホントにやりたい『仕返し』をしてもいいんだぞ」

「ボクの本音を聞いたら……ホントの『仕返し』をしたら、拓はきっと後悔するよ」

「それでもいいから言えよ。俺と咲は親友だろ? 隠しごとをそのままにする方が俺は後悔する」


 咲は難しい顔をして、深く考え込んだ。

 そして何かを決意したような顔になって、俺を真っすぐに見つめる。


「ホントに後悔するぞ? いいのか?」

「ああ、いいよ」

「わかったよ拓。じゃあ心して聞けよ」

「ああ」


 咲はいったい何を言い出すのか?

 罵詈雑言を浴びせられるんだろうな。


 俺は心臓がバクバクと鳴った。

 そしてごくんと唾を飲み込み、咲の次の言葉を待つ。


「なあ、拓。ボクは拓を異性として好きだ。ずっと前から大好きだ。だから彼女ができるなんて、めちゃくちゃ悲しい」

「はぁっ!?」


 咲は顔を真っ赤にして、唇をきゅっと噛みしめている。


 咲は何を言ってるんだ?

 これって……俺に対する告白だよな?


 その告白のどこが仕返しなんだ?


「ど……どういうことだよ咲?」


 呆然と訊いた俺に、咲は答える。


 実は咲も、今まで何人かの男性から付き合って欲しいと告白されたらしい。

 つまり祭りの境内で咲が言った『こんな男っぽい女子を好きになる男子なんていない』という話は、真っ赤なウソだったってことだ。


 しかしそれらの告白をすべて断ってきた。

 それはずっと俺のことが好きだったからだと咲は言った。


 大学生になって遠く離れ、俺と咲はほとんど関わりはない。

 つまりそれは叶わぬ恋だと知りながらも、俺への想いが断ち切れなかった。


「でもさ。いつまでもこのままじゃダメだと思って、ようやく拓のことは諦める決心をしたんだよ。それがつい最近のことだ。それなのに──」


 そんな咲のところに、俺が突然会いに行ってしまった。

 顔を見たら、俺への想いがまた再燃してしまった。

 恥ずかしそうに咲はそう言った。



「困ったことだよ。別に拓が悪いワケじゃないけど、ボクをこんな気持ちにさせる拓を憎らしく思った。だから東京に行って拓に仕返しをしてやろう。そう考えたんだ」


 ──新しい彼女と付き合う前に自分の気持ちを伝えて、自分と同じように拓を困らせてやる。

 そういう計画だったと、咲はニヤリと笑う。


「そりゃあ拓はボクのことなんか、なんとも思っていないかもしれない。だけど、それでも長年の付き合いの親友から恋心を打ち明けられたら、別の女の子と付き合うにあたって少しは戸惑うだろ?」


 咲はそう思って東京に来たらしいのだが。


「しかし実際に拓の顔を見ると、そんな困らせるようなことは、やっぱりボクにはできないってわかった。だから一発拓を殴ってから、田舎に帰ろうと思ったんだ」

「咲……」


 なんてことだ。

 親友としてではなく、異性として、咲も俺のことを好きだと想ってくれてたなんて。


 嬉しくて嬉しくて、この身体中が火照り、今にも爆発しそうだ。

 こんなことなら、俺ももっと早く勇気を出していればよかった。


 いや、今からでも遅くない。

 咲は勇気をもって、本音を語ってくれたんだ。

 俺もホントの気持ちを伝えよう。


「なあ咲。ありがとう。実は俺も、咲のことが異性として大好きだ。……この前言ってた女の子のことは、その場でお付き合いを断ったんだ」

「え……? ま、マジか?」

「ああ、大マジだ」

「う……嘘みたいだ……」


 咲の大きな目から、突然大粒の涙があふれ出した。

 白い肌の頬を伝う涙の粒が、キラキラと輝いて綺麗だ。


「拓に仕返しするつもりで東京まで来たのに。逆に、拓に仕返しされてしまったよ」

「ああ、返り討ちにしてやったぜ」


 俺がおどけて言うと、咲は少し悔し気な表情を浮かべて「くっ……」と歯ぎしりをした。

 俺は真顔に戻って、咲を見つめた。


「なあ、咲……」

「なんだ?」

「俺からの告白を、仕返しなんて言うなよ。これは、いわば……『おもがえし』とでも呼んでくれ」

おもがえしか……悪くない言葉だな」

「悪くないどころか、いい言葉だろ?」


 咲は俺の顔を見つめて、はにかんだ顔でひとこと、

「うん」

 と、嬉しそうにコクンとうなずいた。


 耳たぶまで真っ赤になって照れた咲の顔は、それはもう滅法女の子っぽくて、この世界中の誰よりも可愛かった。


== 完 ==




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あえてテンプレラブコメっぽくないものを書いてみました。

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