第2話



「おい、おっさん。今なんつった? 」


 突然言い寄って来たそいつらに、宝塚は意味が分からなかった。

 

 ただおっさん呼ばわりされたのに傷ついていた。

 

「聞いてんのかこら! 」


 そう言ってバイクを蹴られた。

 

「おい! 」


 無視していてもよかったが、さすがにバイクを蹴られては声が出る。

 

 ただその所為で他の奴らも来てしまった。

 

「どうしたタツオ? 何かあったか」


「いや、こいつが喧嘩売って来たんすよ」


「おい、おっさん。やんのかこら」


 関わるまいと決めていた宝塚だが、我慢の限界だった。

 

 バイク乗りの風上にも置けねえ。

 

「お前が先に蹴ってきたんだろうが」


 口を開いてしまえば止まらない。

 

「ヘタレの癖に、何調子に乗ってんだよ!


 ごっこ遊びなら幼稚園でやっとけ! 」

 

「誰がヘタレじゃ、こら! 」


「お前らだよ! 


 メットなんか被ってる奴がヘタレじゃなくて何なんだ、ああ? 」

 

「なんだテメェ、こら! 」


 声を上げてはいるが、宝塚はすでに面倒になっていた。

 

 こいつらと同じ立ち位置で会話してしまっている時点で自分の負けだ。


 そう思い、目線を外せば信号が青に変わった。

 

 宝塚はバイクを前進させた。




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