★★★

奈良ひかる

第1話



 その日、タツオは初めての集会に出ていた。

 

 このチームponpokoに入って始めての集会だ、緊張しない訳がない。

 

 でもそれがバレないように平気な顔をして出ていたが

 

 リーダーが何を言っていたかははっきり覚えていない。

 

 結局メンバーとして一緒に走った事に興奮した事はよく覚えている。

 

「これで俺もメンバーだ」


 そう浮かれながら風を切って走った。

 

 

 

 

 宝塚はその日、いつものようにバイクで走っていた。

 

 ちょうど交差点で信号待ちをしてると、横にやかましい集団が止まった。

 

 所謂、暴走族と呼ばれる奴らだ。

 

 無駄にふかして、騒音をまき散らす。

 

 一体それに何の意味があるのかは知らないが、

 

 聞かされる方にしてみれば不快なだけだ。

 

 ただまあ、関わるだけ損をするのはこちらだけなのだから

 

 当然のように無視していたら、それが目に入ってしまった。

 

 ハーフヘルメットに赤色で「殺す」と書いてあり、

 

 きっと自分で書いたのだろう、バランスの悪い汚い文字だった。

 

 それを見て宝塚は思ってしまったのだ。

 

 

  どうして殺そうとしている奴がヘルメットを被っているんだ?

 

 

 そして、そんな奴らが群れて行動している。

 

  

  一人じゃ、何もできないただの怖がりじゃないか。

  

  

 そう思考した宝塚から言葉が溢れ出してしまった。

 

「ダッサ」


 だから宝塚にしてみれば、その言葉に何の意味も含まれてはいない。

 

 吐いた息に音が乗っただけだったのだが、

 

 どうやらそう言う事ではすまないようだった。

 

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る