第2話
はぁ、今日こそは異世界転生できるといいんだが。いやなかなか難しい。
まあそりゃあそんなに簡単ではないっていうことはわかってるんだが、子供の頃見た異世界モノのアニメを観た日からかれこれ20年だ。
本来であれば生活の全てを異世界転生に注ぎ込みたいんだが。日々の生活もあるので、収入の為の労働は必要になる。
しかし物は考えようだ、ある異世界転移のパターンで。こっちとあっちを行き来するパターンがあるだろう?家の蔵の中でもいいし、押入れでもいい。
いつの間にか転移する為のゲート?みたいなヤツがあって、そこから自由に転移できるやつがメジャーだろう。
神様に転移のスキルを貰うのもいいだろう。
兎に角、その場合に必要なのは「お金」だよな。
色々な物資を買い、あちらで高く売る。鏡とか、胡椒、白い砂糖など。大概あちらでは珍しくて高価だ。それを売って金貨がっぽり。
いわゆる転売チートができる。
そのためにも現実で稼がなければいけない、金があればあるほど沢山の物資を買える。そうするとチートの効果は強くなる事に繋がる。
幸いにも俺は結構稼いでいる、なぜか知らないが出世してそこそこの地位にいる。
まあ転生したら、全部捨てるんだけどな。
という訳で今は会社に向かい異世界転移の事を考えながら出勤中で、最寄りの駅まで歩いて向かっているんだが…
「キャーーーッ!」
何処からか悲鳴が聞こえた。
「チャンス!」
オレはすぐさま辺りを見回すと、道の真ん中に幼女が転んでいるのを発見。
通学中で、おそらく道の向かいにいる友達の所にでも走って行こうとしたのだろう。
そして、道の向こうからはフラフラ走るトラック。朝だから徹夜で荷物を運んで、睡魔に負けたのだろうか?お疲れ様です。
そして、学校へと送る為に一緒にいた母親が悲鳴をあげた、といったところか。
なにはともあれ、これは転生チャンスだ!つい不謹慎にも「チャンス」と言葉に出てしまったスマン。
因みにここまでの思考は1秒もかかってない、異世界で魔法が使える場合に並行詠唱がしたい。その為に思考速度を鍛えまくったからな。
待っていろ幼女よ、今助けてやる!
そしてオレは異世界に!
とはいえ、ひとつ注意してほしい。重要なのは幼女を本気で助けようとしなくてはいけないって事だ。
なぜならば、神様なり女神が本気で助けようともしない者を転生させてくれるだろうか?
否である。
本気で助けようと行動を起こした結果、神様はその褒美に転生させてくれるのである。
「じっとしてろ!」
動かれると守りにくいので、幼女へ声を掛けながら持っていた鞄を捨てて、走り出した。鍛えた瞬発力にかかれば雑作もない。
幼女の元へ一瞬でたどり着いた俺は、幼女を抱きかかえ背をトラックの方へ向け、衝撃を待つ。
-ゴンッ!
背中に衝撃を受け、幼女を抱きかかえたまま吹っ飛ばされ道の真ん中を転がる。
どれくらい飛ばされていただろうか、一瞬だが意識を無くしていたようだ。
何はともあれ、幼女を立ち上がらせ無事を確認する。
うん、驚きすぎて声も出ないようだが怪我ひとつない。
そして俺も、多少のすり傷があるぐらいで全く問題ない。スーツはボロボロになったが、そちらの方が被害が大きいぐらいだ。
今回も異世界転移し損ねてしまった。鍛えた自分の身体が恨めしい…
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