第3話

「お嬢ちゃん大丈夫?身体に痛いところはないかい?」


 道路の脇に移動し、軽く観察した感じ大丈夫だが、一応念の為に幼女に声をかけたのだが…

「は、はぃ、だいじょうぶでしゅ…あり…ありが………ひっ、ひっく」


 あっ、これヤバい。ぎゃん泣きの前兆…


「どぁええええぁ、びゃああぁあああぁあっ!ごべんなざぁいぁああっ!」

 おいおい、頼む。子供は苦手な部類なんだが…

「怖かったね、もう大丈夫だよ。おじちゃんも怪我ないから。次は気をつけようね」


 幼女を抱っこしながら頭をなでる。

 これでいいのか?くっ、幼女の対処を学ぶべきだった!異世界で幼女を助けるシチュエーションなんかありふれているだろうに!

 というか、母親はよ来い!


 母親の方へ視線を向けると、呆然としていたが、はっと正気に戻りこちらに駆けてきた。


「す、すいません!お身体は!?大変、救急車呼ばないと!110番もしないと!ああ、私が目を離したばっかりに、ほんとすいません!」


「お母さん大丈夫ですから、落ち着いてください。この娘も見たところ怪我はないみたいなので。一応救急車は呼びましょう。」


 幼女を母親に預け、周りの人だかりに声を掛け救急車や警察への連絡の状況を確認すると、既に連絡済だったようで、協力してくれる人達と共に周りの整理にとりかかった。


 走ってきたトラックは電柱にぶつかり、運転手は気を失っていたので、慎重に車中から引きずり出し路肩に寝かせておく。

 ガソリンに引火する等の危険性があり、トラックの周りに通行者が近づかないように誘導。

 

周りから安静にしてろと声をかけられながらも黙々と作業をしていると、やっと救急車とパトカーが到着したようだ。


「とりあえずお子さんと運転手さんを優先で救急車に乗せてください、私は大丈夫そうなのでこのまま会社に向かいます」


近づいてきた救急隊に状況説明をして指示を出すと。


「はぁっ?いやいや!あなたトラックに撥ねられたんでしょ!?」

「そうです!娘を庇っていただいて!何かあっては困ります、病院にいきましょう!」


 幼女の母親からも説得され、ほぼ無理矢理救急車に乗せられることになった。


 いやホントに無事なんだが…会社にも連絡しないと…救急車のなかで携帯電話つかえるのか?




「もしもし、亜根羽部長ですか?お忙しいところすみません。設計部の境ですが。幼女を助けてトラックに撥ねられたんですが、救急車に乗せられたので本日は少し出社が遅れます。」


『はぁ…、またかい境君…まあいいよ、どうせ無事なんだろう?そして何かしら我が社にいい事が起こるんだ。私は忙しいから切るよ、せいぜいゆっくりしてきなさい』


 なんだろう…確かに無事だし問題はないのだが…投げやりというか、諦念というか…


 解せぬ。

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