第3話 怪人二万面相の推理
エアライダーを乗りこなし、アジトに戻った怪人二万面相だったが、表情は曇っていた。何から何まで計算外。エレガントに全てをこなすのが怪人二万面相の信条だ。ターゲットは盗めたし、追跡の気配もないとはいえ、今回の顛末は満足するに値しない。
——レオンの新しい助手に変装するまでは上手くいっていたはずだ。
振り返りながら考える。探偵がするはずの推理を、怪人がする羽目になっていた。
大々的に看板を掲げているレオンの事務所は日頃から監視している。経緯は不明だが、レオンがあのコノハという美々栗家の娘を助手にしたのは把握していた。利用しない手はない。彼女に変装してしまえば、屋敷のどこでもフリーパスなのだから。事実、彼は警官達を尻目に、ターゲットのそばで予告時間まで待機することができた。本物のコノハは安全な場所で眠らせてある。しばらくもしないうちに、自分で脱出したはずだ。
しかし、18時59分のあの名乗り。
あれだけは許せなかった。怪人二万面相ならば19時に予告した以上、それより早く名乗ることなど絶対にしない。それが分かっているからこそ、偽物はギリギリ早く名乗りを上げたのだ。撹乱のために、19時ぴったりに作動するように設定していた自走式ホログラム発生装置が、まんまと利用されてしまった。
あの変装技術を見るに、自分を出し抜いたあの偽の怪人二万面相こそが、レオンなのだろう。今頃ラボード警部は泡を食って大目玉のはずだ。そう考えると少しだけ溜飲が下がるが、しかし事はそれほど単純ではない。
最後に偽の怪人二万面相を捕らえたのは誰だったか。上空から見た限り、それもまたレオンだったのだ。となると、主要人物のうち今まで登場していないのは誰だったか——
『って、危なッ!?』
つい今の今まで立っていた場所に、烈風が巻き起こる。何が起きたか、目の前にあったコンピュータは弾け飛び、デスクはひしゃげ、グラス類は粉々に砕け散った。避けられたのは彼の怪盗としてのセンスが成した奇跡と言えた。
「ちっ……」
そこに突如として現れたのは——全身を強化外骨格で固め、憤怒の表情を浮かべた美々栗コノハだった。
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