第31話『コインランドリーへ行ったら黒のTバックが忘れられてあった』話

『ナニワの金借り』さんの日記を見てみる。あの静香さんがわざわざコメントを書いてまで教えてくれたお勧めの書き手。確かに面白い。内容はコメディと言うか。すべらない話みたいと言うか。僕(私)が最初に見た日記の内容は『コインランドリーへ行ったら黒のTバックが忘れられてあった』話。まずその設定が面白いと思う。実際にそういうことがあったのか想像で書いてるのかは問題ではない。読みたいと思わせるものだ。そして自分の中の天使と悪魔、その両方が順番に頭の中へ囁いてくるという書き方。これも上手いと思う。


天使「ダメよ!ダメダメ!そんなの忘れた方が今取りに来たらどうするの?そもそも女性のデリケートなものなんだから。それを持ち帰ったりするのは犯罪よ!」


悪魔「ぐへへへ。これはご褒美だ!最近は悪いことばっかりだったろ?そんなお前に対するご褒美だ。なあーに、バレやしないし。今そっとそいつをポケットの中にしまっちまえばそれで完璧。持ち主が取りに来たら?『さあ…、そんなのはなかったですよ』と言っちまえばいいだろ。そしてそいつを持ち帰ってだな。まあコインランドリーにあるってことは洗ってしまってるのかもしれねえが。長年使ってるもんかもよ。シミとかは簡単に落ちねえからな。かぶれ!持ち帰って被るんだよ!頭から!自分で履くのもいいぞ!お前なら出来る!それに持ち主が取りに来たらそいつの顔も拝めるってもんだ。美人さんだったら最高だぞ。美人のTバックだぞ。長年使ったシミ付きの。今を逃せば今後十年はお前にいいことは起こらないからな」


天使「ダメです!あなたがそんなことをするような人でないのは私が一番よく知ってます!それに防犯カメラだってついてるんですよ。バレますから!もしバレたらこれからはご近所さんから『コインランドリーで黒のTバックを持ち帰り頭からかぶった後、自分で履いて食い込ませた男』って呼ばれるんですよ!他人のデリケートなものを悪用するのは絶対ダメです!さあ、それをそのまま元の場所へ置いて」


悪魔「馬鹿か。元の場所へ置くだと?そんなのミスミス次の野郎にチャンスを譲るだけじゃねえか。どうせ誰かがゲットしちゃうんだぜ?それなら第一発見者のお前に一番権利があるじゃねえか。防犯カメラ?知るか!言われたら『あ!気付かなかったです!たまたま気付かず自分のに紛れちゃいました』って言えば済む話だろ?いけ!取れ!ポケットにしまえ!やれ!やっちまえ!」


天使「ダメよ!『どっきり』だったらどうするの!?みんな見てるんですよ!あなたを試してるんですよ!こんなことで信用を地に落とすようなことをしてどうするんですか!さあ、どうせ誰かがとかって考えは間違ってます。次の人もその次の人もきっとあなたと同じで優しい方で。紙に『忘れ物』と書いて見えやすいところに置くに決まってるわ!」


悪魔「ばーか!ばーか!それこそ見えやすいところに置いとけば絶対他の野郎が持っていくに決まってんだろ!それにそんなことされたら逆にこの黒のTバックの持ち主は『私のです』って言いにくいだろ。お前が持ち帰るの正解なんだよ」


天使「だめーーーーーー!」


 そんな攻防戦が頭の中で一秒より短い間に行われるも私の背後から声が。振り向くとものすごいおばあちゃんが。一言。


「私のおパンツ、取り忘れてなかったかのお?」


「あ、これですか…」


「おお、それじゃ!おぬし、ひょっとして…?」


「いえいえ!な、な、な、なにも考えてないですよー!」


 ここで言わせてください。


 おばあちゃん!黒のTバックなんか履かないでください!


 それじゃあみんな!あばよ!いい夢見ろよ!



 コメントもいいねもたくさんついてる。このレベルを毎日書けるのならこの人は超一流だ。よくよく調べたらピュアの日記ランキングで百位内に入っている人であり。そしてこのレベルで大体八十位前後。ただ、これは自己評価であり過大評価であるかもしれないけれど。僕(私)はこの『ナニワの金借り』さんに負ける気は一ミリもしない。フォローもしないし、コメントも書かない。いいねもつけない。ただ、あの静香さんが『ナニワの金借り』さんに僕(私)を引き合わせた。どちらが上なのか。その答えを静香さんは胸に出しているのだろう。僕(私)は負けない。小説家になりたい僕(私)が譲れないもの。それに静香さんは気付いているのだろう。僕(私)は負けない。負けられない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る