第25話閲覧者116

 ちひろの日記、四日目。


「昨夜は3Pで燃えました…」


 あらやだ!あたいったら!なにをこんなところに書いてるだわさ!!え?嘘じゃないわよー!本当だわさー。うーん、今?あたい以外の二人は寝てるだわさー(額に『肉』とか『米』とか『野菜』とかもしくは『満子』とか油性マジックで書いてやろうかしら)。いやあー、昨夜は本当に燃えただわさー。あたい、挟まれちゃって前も後ろも。「あああああああああああああああああああああああああああ!」とね。これは本当にやられちゃったあーーーーーーー。え?『何の話』?あらやだああああああ!何を想像してたあー?昨夜は三人で『ボンバーマン』をプレイしてたのだわさー!!(痛っ!ゴルフボールを投げたのは誰!?)


 じゃね♪また明日ね♪悪夢を見ろよー♪byちひろ


 そして更新ボタンをクリックする。四日目。僕(私)の日記はものすごい数字をたたき出す。


 閲覧者116。


 更新ボタンを押して五分でこの数字である。そしてまだまだ数字は伸びる。僕(私)は昨日よりも心でガッツポーズ。それでもコメントもいいねもつかない。これを見ている人たちは釣られたとは思っていないと思う。僕(私)だったらこの日記のタイトルなら確実に押して見るかは分からないけれど、ここは下ネタや卑猥な話、画像に溢れる出会い系サイトの日記コーナー。そして僕(私)がこの日記の内容を見たら確実に才能を感じると思う。だって別の『3P』を絶対に想像すると思うから。そしてこの内容は嘘を言ってない。『ボンバーマン』なら普通に3Pはあるし。あれ?最大で5Pまで出来るんだっけ。それでもいいねがつかないのも何となく分かる気がする。見ず知らずの男性(男性で登録してるから)が書いたこんな日記、男性ならよほど器の大きい人、女性なら…、まあ出会い系サイトデビューして四日目の若葉マークの人に簡単にいいねは押さないかなあ。これって心理的なものだと僕(私)はすごく思う。素直に「いいものはいい」と尊敬の気持ちを持つことは簡単なようで難しいことであり。いくらいいねボタンを押すのは無料だろうと簡単には押してやらないって気持ちも分かる気がする。だよね。マロン@ラブライバーさんは僕(私)のこの日記をきっと読んでくれるのだろう。だってフォローしてくれてるもん。なんかコメントくれるのかなあ…。また褒めてくれるのかなあ…。どんどん増える閲覧者。それでもいいねとコメントはゼロのまま。僕(私)はパソコンの電源を切る。明日はどんな日記を書こうかなあとか考えながら、今書いている作品のことも考えながら。下読みの人も僕(私)の応募した作品を実は読んでいて。面白いと思っていて。それでもそこに今日の日記への反応みたいに意地悪な感情を持ってわざとシュレッダーにかけてるんじゃないかとか考えてみたり。自分の都合のいい方にばかり物事を考えてしまう。けれど。今日の日記で初日はたったの二人だった閲覧者数が四日目にして三桁を余裕で超えたのは事実だ。僕(私)は自分で自分を励ます。そんなことをずっと繰り返してきた書き手としての人生だ。

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