第24話ラブライバーさんは小説家になりたかったんだ。

 僕(私)は焦った。昔はお金を払わなければもらえなかった感想。サークルで時間をかけてもらえた感想。作品の感想ではないけれど、自分の書いた日記にこんな短時間でコメントがもらえた。どんなコメントだろう?緊張する。なにせここは匿名の世界。誹謗中傷も大いにあり得る。僕(私)は男性で登録している。まだそんなにたくさんの日記を読んでないけれど女性は批判的なコメントを書かれない。男性も攻撃的なコメントはしない。女性から男性にだけは反論的なコメントの書き込みをすることがある。コメントを見てみる。男性からだった。


 マロン@ラブライバー(静岡県 28歳)


「笑いましたw確かに悟空、筋斗雲乗れないですねw面白かったので日記フォローさせてもらいますね(^^)」


 おお!いい人だ!しかもコメントの内容も日記を褒めてくれているものである!嬉しすぎる!僕(私)はすぐに返事のコメントを書こうとしたが手が止まる。日記をフォローとはどういう意味なのだろう?僕(私)はサイトを見て日記のフォローについて調べた。自分のお気に入りの人の日記をフォローする機能があり、その人の日記が更新されると通知が受け取れるとのこと。マロン@ラブライバーさんの日記を見るとかなり長期間、それなりの頻度で更新を続けてある。この場合、僕(私)もマロン@ラブライバーさんの日記をフォローするのがマナーなのかな?ツイッターの相互フォローのようなものなのかな?普段なら少し考えるところだけど、気さくにコメントを、しかも嬉しいコメントを書いてくれたマロン@ラブライバーさん。僕(私)はキーボードを打つ。


>マロン@ラブライバーさん

「コメントありがとうございます!ですよねー!他にもゴムゴムの人は避妊する時にゴムを被せるのか?など。考えるとキリがないですねwあと、日記のフォローありがとうございます!こちらもフォローさせていただきますのでよろしくお願いします!」


 それから僕(私)はマロン@ラブライバーさんの過去に書かれた日記に目を通した。この出会い系サイトを三年ほど利用しているらしい。それでも彼女は出来なくて、今はほぼ日記メインで利用しているみたいだ。日記の文章を読めば分かる。この人の文章力レベルは高い。時事ネタや自虐ネタ、自分の趣味や日常を面白おかしく読みやすく書いてある。また、喜怒哀楽を幅広く書いてあり、いくら匿名でもここまで本音を書くと批判的なコメントをされるのでは?と思うようなことも不快に感じさせないように書いてある。そう、この人の文章は鼻につかないというのであろう。文章にはいくら良い内容であろうと良い文章であろうと鼻につくことがある。それは書き手としてマイナスでしかない。読み手に媚びている訳でもない。この人の文章は等身大の二十八歳で彼女がずっといない非リア充が綴る前向きな物語だ。そしてこの人の書いた日記の中に一行の文章を目にした。


 昔、携帯小説を書いていた頃があったなあ。


 マロン@ラブライバーさんは小説家になりたかったんだ。最近の日記を読んでも小説家になりたいとか、ネット小説を書いているとかなどは一言も書いてはいなくて。この人は昔、携帯小説で小説を書いていたわけで。今もその夢は捨てていないかはこの人の心の中にしか答えがないわけで。僕(私)はたくさんの想像をそこからしたわけで。


 僕(私)は出会い系サイトで素敵な出会いをした。明日は何を書こう?僕(私)はそう考えながら、文芸サークルの同人誌で作品を書いていた昔のことを思い出していた。パソコンの電源を切る。今日書いた日記の閲覧者数を確認するのを忘れていたことに気付いたけれど今日はそんな気にならなかったのでパソコンを再起動するどころかスマホで確認することもせずに布団にもぐりこんだ。

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