0443 枉惑
「その子、誰なの?!」
凍った背筋がゾッとした。
私は自分の後ろに立つ、
私を見て、
「よくやったな、入間」
そう言いながら、グループの男子生徒が
『ダバッ!!!』
耀ちゃんが物凄い勢いで突進した瞬間、もうすでに奈菜実さんの手を取って屋外へ脱出していた。
「きゃああっ!!!」
なのに直後、脱出した先から耀ちゃんの悲鳴が聞こえた。私の足が震える。
「なんだこの女?」
「ああ、篠田さん。オツっす」
男子生徒は、耀ちゃんを掴み抱えたその大柄な
いじめの中学生グループは、男子生徒は一人のみで女子生徒が3人だけだった。それだけの筈だった……。
私は、さも
「どうやって連れてきたんだよ、入間?」
「恭平、超簡単だよ。こんなオバサンたち
「すげえな、さすがだぜ。にしてもよ、小川、お前コラ調子ん乗んじゃねえぞ?!」
「関係ないから、この人たち、知らない人だから!!!」
「あん?馬鹿かお前、さっき名前で呼んでただろ?」
自分の愚かさに自らを
「なーにが、証拠の動画、残したからー!だよ、ババア。今から動画に撮られんのは、テメーらが襲われてるシーンだよ!そしてソッコー世界中に拡散だ!残念だったな」
「アンタたちが気に入らないのは私でしょ!!!私をいじめればいいじゃない!!!」
「うるせんだよっ!!! 兔方輔に守られてたと思って調子ブッコいてっからこうなんだろ?ああっ?」
「兔方輔は、私と関係ないじゃないのよ、悪く言わないでよ……」
「死んでくれてヨカッタぜ、あんな奴、ひきこもりのジジイに刺されて昇天した、ただの馬鹿だろ?」
私は少年の目の前に立っていた。
私の右手でこの餓鬼の両頬を何度も張り付けていた。
餓鬼は予想外の出来事に、自らの頬を張られる度に無様に目を閉じていた。私は止めなかった。
「恭平に何すんのよっ!!!」
ハグ~っと後ろから耀ちゃんが私に抱き付いた時の事を思い出した。彼女が私にくっついて暖かかった感触が甦った。
「早枝ちゃんっ!!!」
見ると耀ちゃんは遠くにいた。
私の後ろにくっついているのは、得体の知れない女だった。
「痛い」
そう感じた直後に足に力が入らなくなっていた。
私はどうしてか仰向けに倒れ、見上げた視界は下から見えるその女の顔だった。
女の手には鋭利なナイフが握られている。
私を見下ろすその女の目玉は、落ちそうなほどに見開かれたままになっていた。
「早枝ちゃん!!!早枝ちゃん!!!」
耀ちゃんが私を抱っこしている。
「馬鹿だ!!!コイツ刺しやがった!!!知らねえぞ!!!」
それはあの餓鬼の声だった。そして全員が走り去る音だけ聞こえた。
「よかった……」私はそう声に出した。
「奈菜実ちゃん!!!私のこれで119押してこの場所を説明して!!!」
「わかった!!!」
「早枝ちゃん!!!しっかりして!!!どうしよう血が止まんないよ、救急車来るから我慢してね、ごめんね、私が早枝ちゃん守れなくてごめんね!!!」
「耀ちゃん……ごめんね。私のせいで危ない目に遭わせて。ごめんね」
「いいから、もういいから」
「耀ちゃんと行きたかったな修学旅行。一緒に行きたかったな」
「喋んないで、ダメ、起きてて、目を
私も、いじめられてたんだった。
うちは貧乏だったから。
お父さんがお人好しですぐ簡単に人にお金を貸したり保証人になったりして、うちにはいつもお金がなかった。
どうしてこんなこと思い出すんだろう。
走馬灯かな。
もう耀ちゃんの声も聞こえなくなってきちゃったよ。
『 おっさな~い さっえな~い おっかねない~ 』
『 ぶっさな~い しょ~もな~い とっくぎな~い 』
『 おっさな~い さっえな~い おっかねない~ 』
『 ぶっさな~い しょ~もな~い とっくぎな~い 』
長内、冴えない、お金ない。
ブサ内、しょうもない、特技ない。
そう言っていつも馬鹿にされてた。
私にピッタリの言葉だよね。
いつも泣いてた。
強くなりたかった。
でもいつも自分に自信がなかった。
私は駄目な子。
だから耀ちゃんが何だか眩しかった。
憧れてた。
耀ちゃんが大好きだった。
耀ちゃんに出逢えて良かった。
「ありがとう耀ちゃん」
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