0320 衝撃
今月5日、東京湾若洲海浜公園で会社役員の男性が殺害された事件で、警察は事件の解決に向け、現場周辺で情報提供を呼びかけました。
事件発生から3週間たった今日、捜査員20人が現場周辺で聞き込みをして情報提供を呼びかけました。警察は、犯人に結び付く目撃情報のほか、事件当日現場付近で撮影された写真や動画の提供を求めています。
この事件は1月5日23時30分頃、東京都江東区の会社役員、
人権派として知られていた岩出さんは交友関係が広く、様々な団体の理事なども務める人物でした。警察は、交友関係のトラブルや金銭目的の可能性もあるとみて、詳しく調べています。
あれ以来、潮さんとは仕事上の目の回るような忙しさの業務と、研修の上での心理判定についての会話しかしていない。
そもそも、このままで良いはずがありませんでした。
そしてずっと気になっている、芽恋くんのお母さんが疑いを掛けられた事件の記事は、まったく詳しい内容がどこにも載っていませんでした。事件の捜査は進展していない様だったのに、佐亜良さんは最重要参考人として連れて行かれた……。殺された被害者は、会社役員の男性。佐亜良さんは既婚の子持ち女性……。何がどうしてそうなるのでしょう。
そんなある日、私はとある記事にこの目を剥いた。
この記事について、どうしても彼の意見が訊きたい……。そんな思いで、まだあの時のことをしっかりと謝れずにいた私は、テニスコートで軽快にプレーする女子大生をぼんやり眺めていた。
「よし、行ってみよう」
大きく見積もっても、ロウソクの火よりも乏しい熱意しか持ち合わせていない私は、精神保健福祉センターの、潮さんのあの部屋を訪ねた。
あの部屋までの廊下が、ことのほか長く感じた。そこはまるで十三階段のような、刑を執行される罪人の気持ちでした。
――しかし、今日はここにいるはずの潮さんの部屋は無人だった。
「やっぱり施錠とかしないのですね……」
とても落ち着く空間、本棚にキレイに並べられた無数の本たち、静かな室内。
こんな職場なら、とても仕事がはかどりそうです。
そうして私は、初めてここを訪れた時からどうしても気になって堪らなかった、あのソファーの隅にあるモフモフのクッションを、我慢できずに抱いてしまっていました。きゃはっモッフモフー♡
「何なんだ、君は」
「うわっ、びっくりした!ごめんなさい!」
言わなきゃ……。
「うわーあ。あーあーあの、潮さん……」
「何だ?」
「あ、あの時のこと、ほ、本当にごめんなさい」
「まったくもって、
「はぁぁぁ。まったくもって、おっしゃるとおりでございます……トホホ」
彼は、それはそれは美味しそうなフィナンシェを頬張りながら、アンリ・シャルパンティエのピンクに焦茶の紙袋をわざわざ見えるように持っていた。
「それで?どうしたんだ?」
「この記事!見てください!」
――私はものの見事に興奮していた。よくアクション映画でよく見る、軽い力ですぐ壊れる椅子で、この寝ぼけた頭を叩き起こされた気分でした。この時は……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。