第46話
【瑞希】
茉莉が切ったミサイルが2つになってこちらに飛んできた。
これはまずいっ!
ドガッ!!
5m位離れたところの地面に激突して粉々になったミサイルの破片が無数に飛んで来る。
それらの破片が心なしかスローモーションに見える。
でも身体もスローモーションに動くので、これは避けられそうもない!
次の瞬間、全身で破片を浴びた。
ガッシャ!
自分の身体が紙切れのように吹っ飛ばされる。
何回転かして樹にぶつかって止まった。
これは骨の一本や二本折れてるかなぁと思ったものの、全然痛くない。
ということは、重症で痛みすら感じないってヤツかと思ったけど、普通に起き上がれるし動ける。
カーボンナノチューブの外骨格の防御力、半端ないな!
間髪入れず時子さんから通信が入る。
「榴弾砲の発射音を探知5。直ちに散開してください」
え?また?!
全員バラバラの方向に全力で走る。
ドドドドン!
ほとんど真上で榴弾が炸裂し、破片がスゴい勢いで降り注いできた。
またまたまずいっ!
と思った瞬間、何者かが破片を全て跳ね返してくれた。
「茉莉?」
「瑞希兄、運が悪そうだから追っかけてきた」
茉莉が破片を刀で全て防いでくれたらしい。
またスゴい反射神経になってるな。
「全員無事ですね、すぐにさっきの場所に戻って来てください」
時子さんがすぐに指示を出した。
全員、ドローンを飛ばした地点に戻ると、
「敵は恐らくこちらの動きを正確に予測して攻撃をしています。とはいえ、所詮確率的に高い間でなければ攻撃できません。今はもう私たちがどこにいるのか予測できていないはずです。ですので、敵が一番確率が低いと考える正面突破を提案します」
と時子さんが提案。
さすが、敵のAIが考えることを逆手に取った戦略ってことね。
「先ほどの武蔵さんの索敵の結果、光学迷彩を装備したSAM、榴弾砲の特科連隊を3セット確認しました。これらの中心に静さんがいる可能性が高いです」
こうしてまたドローンを上空に上げて、武蔵を先頭に静の潜んでいそうな場所に向かって進んだ。
【果歩】
さっき武蔵がドローンで上がった時、ぱあっと武蔵の視界が頭に浮かんだ気がした。
私の能力って、他人の脳の思念波を傍受することで考えてることが伝わってくるっていう仕組みらしいんだけど、今まで言葉と感情しか伝わらなかったのに、視覚も伝わるようになってるのかしら。
てことは、その内AICGlassesを使わなくてもみんなと五感の情報のやり取りができるようになるかも。
あ、時子はアンドロイドだからダメか。
しかし、自衛隊の攻撃、容赦ないわね。
あんなのくらったら、軽いケガじゃ済まないわよ。
最終訓練というだけあって、実戦に近い形で行うってことかしら。
「ドローンで逆サイドのSAM、榴弾砲を攻撃します。その隙に正面を突破します」
時子が作戦を立案する。
敵の自衛隊も恐らく作戦立案はAIが行っているはず。
隊員の位置や残弾の把握、兵器のコントロールなどを一手に担って、最善策を瞬時に弾き出し隊員に指示を行う。
全ての兵器と隊員には高精細の360度カメラが付いていて、常に敵がいないか監視されているはず。
「果歩さん。武蔵さんと先行して敵隊員の位置を特定してください」
「どうやって?」
「光学迷彩を纏っている限り敵側に気づかれることはありません。果歩さんの能力を使えば近くに人がいるかどうか分かるはずです」
なるほど、思念波探知の能力は、そういう使い方もできなくはないわね。
「分かったわ。やってみる」
さっき武蔵が見つけた光学迷彩を纏った兵器に向かって少しずつ進んでいく。
敵の兵器はSAMと榴弾砲が確認されているけど、恐らく他にも機動兵器が配備されているはず。
樹海の中で作戦行動ができる機動兵器は車両ではなく、二足歩行兵器か多脚兵器だわね。
実は私、自衛隊装備には結構興味があって、訓練で色々な兵器を体験させてもらって、その長所と短所をかなり理解できたと思ってる。
二足歩行兵器は、樹海の中でも樹々の間を縫って高速で機動できるけど、武装は5.56mmとグレネードランチャーのみ、多脚兵器は120mm滑腔砲と12.7mm重機関銃、7.62mm機関銃と戦車と同等の重武装となっているけど、樹海の中では樹が邪魔であまり動けないだろうから、恐らく配備されているのは二足歩行の方ね。
そんなことを考えていると、武蔵から通信が入る。
「機動兵器の駆動音探知。近くにいる」
「了解。今のところ近くに人間の思念波は感じられないわ」
「一瞬だけ肉眼で確認してみる。警戒してくれ」
「了解。茉莉に来てもらいましょう」
敵が二足歩行兵器だったら、茉莉の速さが要る。
「もう、すぐ後ろにいるよー」
茉莉から間髪入れず返答が来る。相変わらずスゴい身体能力だわね。
武蔵が目の部分の光学迷彩を外して索敵を試みた途端、二足歩行兵器が2機迫ってくる映像が頭に浮かぶ。
「二足歩行兵器らしきもの2機接近!速い!」
武蔵が珍しく叫ぶ。
「果歩姉!俺の視覚を茉莉姉に飛ばして!」
「そんなの試したことないわよ!」
武蔵の視覚を私を中継して茉莉に飛ばす。前にガン患者の娘さんの想いを瑞希に送ったときの感覚を思い出して。
「茉莉!見える?」
「ぼやっとだけど見える!あの2機をやっつければいいのね?!」
二足歩行兵器2機は武蔵に向かってトリッキーな動きをしながら間合いを詰めてくる。
それらに向かって、光学迷彩を纏った茉莉がほとんど飛ぶようにして迫り、
「らあ!!」
キン!という音が2つ聞こえて、二足歩行兵器の姿が現れ、そのまま倒れた。
見事に急所である常温核融合炉が搭載されている胸部を破壊している。
さすが茉莉!
樹海のような武蔵のM107の射線が取れない場所は武蔵が索敵して、茉莉の速攻がベストね。
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