※ ※ ※

 まずは村人たちに襲われてもゴーレムが怪我をしないように、ハッチが風の守護魔法をゴーレムにかけた。ゴーレムは初めての感覚にウキウキとしているようだ。

 そしてマサァは魔法でゴーレムの姿を人間の姿へと変える。しかし魔法がまだ完璧ではないため、肌の色はゴーレムのそれだった。

 最後にルノーが先頭を歩いていき、村の中へと入っていく。


 神父が誘導した結果、女子供は町にはいなかった。代わりに屈強な男たちが斧やナタを持ってうろうろしていた。

「見つかったらまずいな。こっちだ」

 ルノーは町の中を熟知していた。そのため、大人が通れないような細い道を選んで進んでいく。

 子供特有の獣道を通るゴーレムとルノー達の頭には葉っぱがついていた。


 小さな冒険を楽しむように3人と1匹は道をどんどんと進んでいく。

 大人たちは少年たちのすれすれの道を歩いていく。


 そのたびにハッチの心臓は口から飛び出しそうになるのだが、ルノーの堂々とした態度で落ち着きを取り戻していた。


 そうして無事に村の端に辿り着くことができた。

 ルノーは自慢の剣の腕を見せることが出来なかったことが少し不満ではあったものの、何だか良いことをしている気がして気分が良い。

 マサァが魔法をとくと、ゴーレムは普段の姿へと戻った。そして最後にハッチが風の守護を外す。

「母ちゃん、どこだよ」

 ルノーの言葉にゴーレムが耳を澄ませた。そうして鼻をぴくぴくとすると、

「あっちだ!」

 そう言って駆けだした。

 ルノーたちも追いかけて行く。

 そうして辿り着いた先に、ルノーたちよりも何倍も大きなゴーレムが岩のようにじっとしていた。

「母ちゃん!」

「坊や!」

 再会を果たした親子は抱き合い、泣いていた。

 それを見たルノーも思わずもらい泣きしている。


 マサァはそっと、ゴーレムたちに人目につきにくい魔法をかけてやった。これで親子の旅路を邪魔されにくくなるだろう。


 15才になって初めて目にした魔物は、大人たちの言うような酷いものではなかった。ルノーたちは、なんとか魔物との共存が出来ないものかと、この日を境に考えていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゴーレムの目にも涙 彩女莉瑠 @kazuno

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る