ゴーレムの目にも涙

彩女莉瑠

※ ※ ※

 小物の魔物たちにたびたび襲われる村がそこにはあった。その村は魔物たちの通り道となっていたのだ。

 そんな村で育った3人の少年がいた。剣が得意なルノー、クールで褐色の魔法を使うマサァ、そして瓶底の丸眼鏡をした気弱なハッチだ。3人はなぜだか馬が合い、良くつるんでいた。


 そうして3人が全員15才を迎えた時、ルノーがマサァとハッチに言う。

「俺らももう15になったしさ、夜は毎晩パトロールしねぇか?」

「いいんじゃないか?」

 同意を示すマサァに対して、気弱なハッチは、

「で、でも、夜の魔物は強いって……」

 あまり乗り気ではなさそうだ。

「ハッチ、お前がいちばん強いんだからな、大丈夫だって!」

 ルノーの言葉に押されて、ハッチも夜のパトロールを了承するのだった。


 そうして3人は毎晩パトロールを行ったのだが、これと言って魔物は出てこなかった。


 そんなある日。

 昼間で寝ていた3人は外の喧騒に眠い目をこすりながら家を出た。

 すると神父が、

「ゴーレムが来たぞ!みなさん逃げてください!」

 避難を誘導する神父と人波をかき分けて、3人はいつも集まっていた木の下に集まった。

「ここは俺らが戦う番だ!」

「そうだな」

「だ、大丈夫なのかな……」

「自信持てって、ハッチ」

 3人は人波と反対の方向へ向かって駆けだした。


 村を出てすぐのところに、噂のゴーレムがいた。ただ、そのゴーレムは噂のように大きなものではなかった。背丈はルノーたちと変わらない。それでも村を脅かす存在であることに変わりはないため、ルノーたちは戦闘態勢に入る。

「な、なんだよ、お前たち。オイラ、母ちゃんを探してるんだ!」

 悲痛なゴーレムの声に、ルノーたちは面食らう。

「母ちゃんって、どこではぐれたんだよ」

 ルノーの言葉に泣きそうになりながらゴーレムは言う。

「この村を母ちゃんが飛び越えていった。オイラ、まだこの村を飛び越えられないから。だから、ここを通ろうって思ったんだ!」

 ゴーレムの言葉に、ルノーたちはどうしたものかと思案した。

「なんか、可哀想じゃないか?」

「母親と離れ離れなんて、それは哀れだ」

「で、でも、ゴーレムに変わりないんじゃ……」

 ハッチの言葉に2人は非難の目を向ける。

「こいつをこのままにはしておけないだろ?」

 ルノーの言葉に、ハッチはじゃあどうするのか、と尋ねる。

「こいつを、村の端まで無事に送り届ける!」

 ルノーの決断に異を唱える者はいなかった。

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