第3話 謁見
《ルビを入力…》 青色に輝く、太陽のような物体が空に浮かび、羽を持った生き物が空を飛び、煉瓦造りの家があり、皆住民は青い髪と青い瞳をしており、明らかに異質でまるでオンラインかアプリゲームのような場所に傑は立っており、恐怖を通り越して、都内に社会見学に来た高校生のように目をキラキラとさせている自分に虚しさを感じている。
「? どうしちゃったんですか? キョトンとしちゃって……」
「大丈夫ですか?」
セレナとバルデスは、田舎から都内に出てきた浪人生が大学生のように周りに圧倒されて阿保面をしている傑を見て、大丈夫かこの男、勇者じゃないのかと首を傾げている。
「あ、いや……この、君らが住んでる世界ってのは、こんな感じなのかい?」
「ええ、こんな感じですよ。まさか、別の世界から来ちゃったって感じですか?」
セレナは、この人は精神に異常を抱えているのではないかと疑惑の目を傑に向ける。
「あ、いや、まぁそんなところなんだが……。国王に会わせて頂けないか? リアルに話したいことがあるんだが……」
「ええ、ちょっとね、場所があっちにあるんですよ」
バルデスは南東の方を指差すと、西洋風の城が立っており、距離に直すと数キロ先である。
「え!? いやちょっと遠くないっすか!? 日が暮れてしまう……」
特殊部隊で訓練を積んで、辞めた後でもジムでハードなトレーニングを続けて体力を維持してきた傑でも、奇天烈な世界で歩いて行く自信はなく、視界に飛び込んでくる奇妙な光景に、頭のキャパシティは破裂寸前なのである。
「あぁ、それなら大丈夫っすよ。魔法で送るので……」
「え!? また魔法ってやつっすか!? それは、人体に害はないんすか!?」
「あぁ、精霊さんに力を借りてるだけなんで、大丈夫っすよ。ちょっと詠唱するんで待っててくださいね」
(魔法……精霊……異常だ。俺はとうとうサイコさんになってしまったのか?)
「バルデスはそんな実力ないけれども最低限の魔法は使えるんで安心してくださいね」
セレナは真剣に詠唱をしているバルデスを見ながら、自分はとうとう精神異常者に成り下がってしまったんだなと凹んでいる傑にそう伝える。
「
「うおおっ!」
傑の目の前の景色がグニャリと歪み、異空間のようなグニャグニャとした、絵具の色が全て混ざったような気味の悪い色の空間を移動し、気を失いかけそうになる。
歪んでいる空間は整ってきて、目の前には、絨毯が敷かれ、鎧を着た兵士らしき人間が数名立っており、部屋の奥にある、いかにも重役的人物が座る椅子には顎髭を蓄えて上質な服を着た中年の男性が座り、相談役なのか、それとも参謀なのか、中肉中背の中年男性と、灰色のローブを着た30代前半の壮年の女性が樫でできた杖を持って立っている。
(うおっ、ゲームに出てくるような光景だ、こりゃ、ますます俺は幻覚を見てるのか?)
「ダバル国王様、予言にあった勇者を連れて参りました」
セレナとバルデスは国王という身分にいるであろう目の前の男に向かって跪き会釈をする。
「おお、ご苦労であったな。さて、そなたが予言の書にあった勇者か」
顎髭を蓄えた男が自分に向かって話かけているので、この男が国王だと知り、なんだゲームに出てくるのと同じで偉そうにぶんぞりかえって、国民の血税で贅沢三昧をしてるクソ親父だなと傑は心の中で毒づく。
「いえ。その勇者ってのがいまいち実感は湧かないし、第一私にそんな特殊能力はないですし、その、魔法ってやつは全く使えません。……仮にそうだとしても、私に一体何をやれと申し上げますか?」
「君には、この国の問題を解決して欲しい。何せ問題が山積みなんでな……」
「いえいえ、というかその、私は元の世界へと戻りたいのですが……」
「国王殿! こやつは本当に勇者なのでしょうか!? なんか、貧弱だし!」
ダバルの隣にいる、額に斬り傷があり、ボディビルダー並みに筋骨が隆々の男は傑を舐めた口調でけなしている。
(うわっ、なんちゅう筋肉だ、ここまでくるともうギャグ漫画の世界だなあ……)
傑の脳裏には、少年が地下格闘技で世界一を目指す漫画の中に出てくる、筋骨隆々の男の画像が浮かんでおり、絶対ドーピングしてるだろと心の中でツッコミを入れる。
「俺が確かめましょうか!? こんな奴がこの国を救えるかってのを!」
「うむ、そうだな……。よし、軽く手合わせしてくれ」
ダバルは筋肉質の男に顎で合図をすると、そいつは背中に背負っている棍棒を取り出す。
「ええっ!? いやちょっと待ってくださいよ!?」
「1番隊隊長のバルス、参る!おらあっ!」
バルスは力任せに棍棒を振りかざし、傑の脳天に向けて打ち下ろすが、傑はひらりとかわし、バルスの手首を掴み、てこの原理で捻る。
「ぎえっ」
「ほらね、やめましょうよこんな乱暴な事……」
(すげえなこいつ……)
(あぁ、1番の力持ちの奴を簡単に倒しやがった……)
傑はバルスが再び乱暴をしないように手首を掴み、周りの羨望のひそひそ声に、俺そんなすごくないんだけどなと謙遜の思いをし、尊敬の眼差しを自分に贈るダバルを見やる。
「見事! この国で問題解決屋を営む事を認める!」
「ええっ!? そんな!」
「ハヤ丘にある空き家を使って良い! 存分に腕を振るって欲しい!」
「はいい!?」
(この人に何いっても無駄だ、どうせ、元の世界には戻れやしないから、仕方ない、ここで細々と暮らすか……)
傑はやれやれという表情を浮かべ、ううう、といううめき声を上げているバルスの手首から手を離す。
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