りりかと前世②
久しぶりにご主人サマの顔色が良い朝、あたしの頭を優しくなでてくれた。気持ち良くって、ウトウトしちゃう。
「あれ。ミミィ、足の裏がすごく汚れてる。どこで遊んできたの?」
あらま。あたしとした事が……。最近は外のお散歩が楽しくて、ついつい遠くまで行っちゃうのよね。森の中のあの子たちの家まで行って帰ってくるってのが日課になってしまったわ。と、そんなことより、ほらほら、もっとなでてよ。
「いいな、ミミィは。元気で。いろんな所に行けて。羨ましいよ」
大丈夫よ、ご主人サマ。もう良くなったんじゃない?元気そうだもの。そしたら一緒に行きましょうよ。あの子たち、面白いのよ。この間なんてね、あたしの耳にリボンを結ぼうとして、いや、そもそもリボンじゃなくて。リボンがないからってドコからかツルを引っ張ってくるわ、あの男の子は不器用だから絡まるわ、しまいにはあたし、そのツルでぐるぐる巻きの宙づりになったのよ。で、それを見た男の子がなぜか「僕も」つって、それを女の子が必死で止めて。大変だったの。ホント大変だったのよ。面白かったけど。
「ミミィ」
なぁに?
「もし、僕が死んだら、森に行くかい?」
なに言ってるの?ご主人サマが死ぬワケないじゃない。お腹減ってるの?じゃあご飯食べないと。ご飯食べないと、死んじゃうわ。
「たしか森の離宮には、兄上がいらっしゃる………。そこに行くのも、いいかもしれない。ね、ミミィ」
だからソコには、今度一緒に行きましょう。あした?あさって?楽しみね。
――――ねぇ。なでて。
「痛っ」
アンタ誰。
「オルディアン。まあ、かわいそうに」
なに言ってるの。コイツはオルディアンじゃない。あたしのご主人サマは“オルディアン”だけど、同じ名前だけど、こんな“オルディアン”じゃない。
「わたくしの大切な大切なオルディアンにかみつくとは。あれほどかわいがってもらっておきながら」
あたしをかわいがってくれるご主人サマは、コイツじゃない。コイツはタダ、髪の色が同じなだけの、知らない人間よ。
「この獣ごときが!」
遊びすぎて結婚前に何度もダタイしたから、もう子供ができない体なんでしょ?自業自得なのに。でも悔しいから、
アンタにはハナっから“
ガッッ。
「陛下!お止めくださいっ」
「…違うでしょう?オルディアン。“母上”でしょう?ほら、言ってごらんなさい、ハハウエよ」
「………………」
「言いなさい」
「………………は、母……上…」
「そうよ。よくできました」
「……………………」
「そこのお前。この獣をどこかへ捨てておいで」
「畏まりました」
「さ、オルディアン。お茶にしましょう」
「動かないし、死んでんのかな」
「そうじゃない?蹴られて、壁に激突してたし」
「じゃあさー………食べられるかしら」
「えー。…………でも、良い物食べてそうだからおいしそう、かも」
「ね――――っいた!」
「わっ」
冗談じゃ、ないわ。こん、な、ヤツらなんかに、食べられてたまるも、んですかっつー、の。
「痛ーいっ。かまれたわっ。生きてる、こいつ」
「逃げた!」
「こら、待ちなさいっ」
待てと言われて、待つ、バカはいないの、よ。ふふん、アンタら、なんかに捕まるミ、ミィサマじゃな、いん、だから。はぁ、は、も、う、いい、かしら。はぁ。これから、どう、しようかな。今日はま、だあの子たちの所、に、行ってないな。あの、男の子、ご主人サマの、いちお、お、兄サンの、ソコに行、こっかな。ご主人サマ、も、言ってた、し。でも、そ、そ、の前に、ちょっ、と休憩、し、よ………。
……………………。
ふふっ。気持ち良いな。
もっと。ねぇ。もっと。
なでて?いっぱい。
早く早く。
ミミィはココよ。
ご主人サマ、ドコに行ったの?
ねえ。
なでてよ。
「りりかちゃん!見て見て、今日のコーディネート。全体をネイビーでまとめて、差し色でこの黄色のカチューシャ。どう?」
「いいじゃない、カチューシャ。かわいいわあ。わたし、この色いちばん好きよ」
「え、そうなの?りりかちゃんて、ピンクがいちばん好きだと思ってたー」
「それは二番目。あたしは、この色が世界でいちばん、大好き」
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