さほりと萌える日々

 初めて胸がキュンとしたのは、テレビドラマでいつも悪役ばかりする俳優がバラエティ番組で、楽しそうに笑ってたり芸人と一緒にコントをやってたのを観たとき。

 本当は明るい人?笑った顔、優しそう。…………。あぁっすてき!!!!




「お母さーんっ、これっ、違うー!わたし赤色のって言ったのにぃっ」


 ネットショップから届いた段ボールの中には、お母さんのワンピースにお父さんのポロシャツに弟の…スニーカーに、それからわたしがとっても欲しかったバッグが入っていた。…の。


「あっちゃー、ごめん!ごめんね。スニーカーと間違えちゃったよ」

「ひどいっ。もう売り切れなんだよっ。……もう無いよう…」


 悔しくて、涙がポロポロあふれた。

 赤いバッグ。ファスナーにハートのチャームが付いててすごく可愛かったのに…。

 うしろで弟は、赤でも「かっけーかっけー」とアホっぽく喜んでる。ふんっ。


 ぐすっぐすん………。


 チャリン、ジーーーー、パカリ。


 !!!!!!


 中、ピンク!!うそっすっごいピンク!まさかのピンク、カワイイッッッ!

 見た目地味な紺色のバッグと思わせて、開けると鮮やかなピンク。

 はぁ、いいわぁ……。

 そうだ、来週のお出かけに持っていこっと。待っていて王子様。


「さほり、本当にごめんね。また買ってあげるから。そうだ、今日はさほりの食べたいもの作るよ。何がいい?」




 本当はこの紺色のバッグ気に入ったんだけど、ちょっぴり悔しいから少しうつむいて――――


「…………オムライス」

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