~7~ 悪夢の序章

 その夜、羽琉は夢を見た。

 怖ろしい過去の夢――。


 中学3年生の時、両親が離婚し、羽琉は父親に引き取られた。

 父親と暮らすことに特に不満はなかったし、家事も羽琉がこなせるため2人暮らしをすることに何の不便もなかった。

 しかし何故か時折、父親が海外旅行に連れて行ってくれることがあった。就職に役立つ免許を何も持っていない普通の会社員である父親が高給取りではないことを知っていた羽琉は、「大丈夫なの?」と何度も家計を気にしていた。

 だが臨時の収入があるのだと言うだけで、父親はその詳細を羽琉に明かすことはなかった。その後も「旅行しよう」と言い出す度にその質問していたが、同じ答えしか返さない父親に、次第にそうなのだろうと楽観的に思い始めた羽琉は段々と詮索しないようになった。

 その理由が分かったのは、両親が離婚して3年経った頃だった。

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