~0.5~ 忘却
思い掛けない出会いではあった。
これまで何度も公園に来てはいたが、エクトルのような外国人と会うことなど一度もなかった。
羽琉は自室の窓から見えるホテルを見つめた。
フランスからビジネスで来日していたエクトルは、近くのホテルに宿泊していると言っていた。今羽琉が見ているホテルは築年数が古く、規模も小さい。エクトルのような気品漂う人が宿泊するには違和感がある。多分、ここから遠くないところにあるハイグランドホテルという高級ホテルに宿泊しているに違いない。
羽琉は小さなホテルを見やりながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
綺麗な人だったという印象はある。男性に対してこの表現はおかしいかもしれないが、エクトルの言動や年齢と共に経験しているであろう人生の深さから滲み出る格好良さが、羽琉に綺麗という印象を与えたのかもしれない。
しかし今回のような出会いはそうそうあるものじゃない。
これまで外国人と全く接したことがなければ特別な出会いとして記憶されるだろうが、海外旅行を経験している羽琉も、仕事で来日していると言っていたエクトルも外国人には免疫がある。互いに忘れるのは早いだろう。
そう――軽く考えていた。
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