七枚目
転校生の正体は、カイジンだった。
隣の席の背高でよくわからない男子生徒は、人間ではなかった。
その答えに至った私は、それでも何度もそれを否定しようとした。
けれども否定しきれなかった、むしろ考えれば考えるほど、否定しようとすればするほどに彼がカイジンであるという確証が強まるばかりだった。
今思うと、今見返してみると、あの龍に似た姿のカイジンが作り出すカイジュウは明らかに私の影響を受けていた。
例えば彼が初めて図書室に来た何日か後にあの龍のカイジンが作り出したカイジュウは、巨大な骨格標本とイソギンチャクを組み合わせたような姿をしていた。
よくよく動画を見返してみると、あの日彼が指差した挿絵のがしゃどくろによく似ている。
他にも、思い返せば思い返すほど、私が図書室で読んでいた本や図鑑の内容が作られたカイジュウ達に少しずつ反映されているように思える。
どうしようと思った、とんでもないことを知ってしまったと頭を抱えた。
彼の正体を私が知ったと彼が気付いたら彼はどうするだろうかと考えた、手っ取り早く証拠隠滅のために殺されるのだろうと推測して、頭を掻き毟った。
彼に会いたくなかった、学校に行きたくなかった、あの教室に行きたくなかった、だけど住所は知られているからもうどうしようもない。
いつの間にか夜が明けていた、身体も心も辛かったが、それでも私は学校に行った。
顔色がよほど酷かったのか、何も知らない転校生は随分私を心配していたようだ。
私は何も知らないフリをしていつも通り彼に接しようとしたが、うまくいかなかった。
彼は徐々に私のことを不審に思うようになった、面と向かって『何があった』と問い詰められたことも何度かある。
その度になんでもないと誤魔化していた。
彼はあの日自分が手にとった『資料』が同人誌であるということにはまだ気付いていないようだ。
同人誌である上に、内容を自分達以外に誰も知らないということを知れば、彼は私が彼の正体に気付いた事を察するだろう。
だからその手の話題は徹底的に避けた、一度「この前お見舞いに行った時に見せてもらった図鑑面白かったよね」と言われた時は心臓が止まるかと思った。
間違っても貸してくれなどと言われない事を祈った、貸すつもりは一切なかったが、それじゃあ自分で買うと調べられても大変困るのである。
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