二枚目

 これは彼らの敵であるカイジンのうちの一人の正体に関する文だ。

 私は偶然、この学校に所属するとある生徒がカイジンである事を知ってしまった。

 だからおそらく、殺される。

 ここ数日はなんとか誤魔化してきたが、だいぶ怪しまれている。

 一度助けを求めようと美少年集団との接触を試みたが本人に邪魔をされてしまった。

 おそらくもう、私にはあとがない。

 誰か様がもしも20XX年、もしくはその一年後以内(要するに20XX年に二年生だった生徒が卒業する前)にこの手紙を手にしてしまったのであればどうか周囲に気をつけてほしい。

 彼はおそらくだが私のせいでよく図書室に入り浸っていた、どうか不審な動きをして怪しまれないように。


 さて、肝心のとある学校の生徒、要するにこの学校に紛れ込んだカイジンである彼について記載する。

 彼は20XX年の九月にこの学校の二年二組に転校してきた男子生徒だ。

 そして、そのクラスで行方不明になるか死体で発見された女生徒がいるのであれば、その女生徒が私だ。

 この手紙を手にした誰か様へ、一応忠告というかお願いを。

 あなたがこの手紙を手にした時、彼と私がまだこの学校に普通に在籍していた場合、どうか私達への接触は極力避けてほしい。

 私が殺されない可能性もほんのわずかだが残ってはいるので、もしも私が普通に生きていられるようなら、私達へは何もしないで欲しいのだ。

 ちなみに同時期に転校してきた一年三組の女生徒もおそらくはカイジンなのだろうと私は睨んでいるが、彼女に関しては確証がないため、この文では彼女に関しては何も記載しない。

 ただし彼に関してはほぼ確実にクロだ。

 美少年集団と接触した翌日に本人から教室で探りを入れられたのだ、ほとんど脅すような心底機嫌の悪そうな態度で。

 文芸部で出す部誌のネタ集めのために取材がしたかった、と咄嗟にそれらしい言い訳をしたものの、完全に疑われている。

 あと何日誤魔化せるだろうか?

 おそらく三日も持たないだろう。

 最終的に彼がどういう決断をするのかはわからないが、きっと見逃しては貰えないだろう、なんらかの危害は確実に加えられる。

 慈悲で苦痛なく殺してくれればまだマシな方なのではないかと思っている、でなければカイジュウの原材料にされるか、嬲り殺しにされるか、あるいは……

 いっそこの文を書き終えた直後に自ら命を断つというのが一番マシな未来ではあるのかもしれない。

 だがそんな勇気は自分にはないので、きっと私は酷い最期を迎えるのだろうと思う。

 殺される直前にもしも問い詰められるのであれば、私は彼の正体を知ってしまった経緯を素直に話すべきなのだろうか?

 わからない、決定的な証拠となる品も持っているのだが、そちらの扱いにも非常に困っている。

 ただ、捨てたり燃やしたりする気にはなれないのだ。

 だが、彼の手に渡ってしまうのもよろしくない、他人に託すという選択肢もないことはないが、託した誰かは確実に彼に狙われることになるだろうからそれはやはりできないのだ。

 だから、どうするかまだ迷っている。

 本当はこんな文も残すべきではないのかもしれない、というか絶対に残さない方がいい。

 それでも、書かずにはいられなかったのだ。

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