1ページ殺人

4人目

今日も退屈な1日が始まった。

眠い目をこすり朝食（ちょうしょく）を食べていると、テレビから今日の占いなるものが映し出されていた。

どうやら、おいどんは8位らしい。

微妙（びみょう）だ。

おいどんは毎朝（まいあさ）、同じ時間に家を出ているのだが、近所におかしな人がいる。

その人は毎朝（まいあさ）、フランスパンを咥（くわ）えて家をて、そしてあえて曲がり角の多い道を選（えら）び駅まで歩くのだ。

曲がり角で衝突（しょうとつ）、出会いのパターンを再現（さいげん）しようとしているのだろうか…。

だがしかし、毎朝みている限（かぎ）りでは、未（いま）だに再現（さいげん）は出来（でき）ていない。

今日も、フランスパンを咥（くわ）えて歩くのだろうか。

家を出てしばらくするとフランスパンのおじさんが現れた。

今日も張り切ってフランスパンを咥（くわ）えている。

日課になっている駅までのおじさん観察（かんさつ）の時間が始まった。

1つ目の曲がり角（かど）が近づくと、フランスパンおじさんは小走（こばし）りになる。

しかし曲がり角（かど）の先は誰もおらず、小走（こばし）りは歩（あゆ）みへと変わる。

そんなことを6回繰（く）り返し、最後（さいご）の曲がり角（かど）に差しかかった。

フランスパンおじさんはラストスパートに向け、全力疾走（ぜんりょくしっそう）で曲がり角（かど）に向かう。

今日も何事（なにごと）もなく曲がり終えーーなかった。

ーーーードンッッ

勢（いきお）いよく曲がり角を進んだおじさんは、弧（こ）を描（えが）くように宙（ちゅう）を舞い、そのまま道路（どうろ）に叩（たた）きつけられた。

おじさんのすぐ近くで女子高生（じょしこうせい）がオロオロしながら立っている。

なるほど、どうやら衝突（しょうとつ）出会いの相手はあの女子高生（じょしこうせい）のようだ。

この3年、毎朝（まいあさ）同じ光景（こうけい）だったが、おじさんはやっと目的達成（もくてたっせい）したのではないだろうか。

通勤通学（つうきんつうがく）の時間帯（じかんたい）のため、あっという間（ま）に人だかりができ、おじさんはみえなくなってしまった。

今頃、出会いった女子高生（じょしこうせい）と定番（ていばん）の痴話喧嘩（ちわげんか）をしているに違いない。

おいどんは電車に乗るために駅に向かったーーー。

その日の夕方、ネットニュースを見ていると、今朝（けさ）のフランスパンのおじさんのことが書かれていた。

今朝（けさ）、門町駅（かどまちえき）近くの交差点（こうさてん）にて、粉川（ごかわ）硬（たかし）（職業ランナー）が、女子高生（じょしこうせい）と衝突（しょうとつ）し、腰を強く打つなどして病院に運ばれたがまもなく死亡ー。

警察は事件現場（じけんげんば）にいた女子高生（じょしこうせい）に任意同行（にんいどうこう）を求めて経緯（けいい）をさらに詳しく調べるとしているー。

ーーーそういえば、咥（くわ）えていたフランスパンはどこにいったのだろう。