連続殺人事件の発生する町で、現場付近に座り込んでいた少女をなぜか拾ってきてしまった『僕』のお話。
重苦しい不気味さの光るホラー作品です。連続殺人、それも被害者の指を切断して残すという猟奇的な事件の発生する中、ふとした偶然から匿うことになった謎の少女。出会いは昨夜、事件現場付近で、しかもその服には血痕までついている。もはや事件に関連しているであろうことは間違いない彼女は、しかしどうしてか主人公を誘惑するかのような仕草を見せる——と、だいたいそんな冒頭から始まる、血なまぐささと蠱惑的な雰囲気の同居するお話でした。
事件の真相(という言い方がふさわしいかどうか微妙ですが)がなかなか難しいというか、何が事実でどこが錯誤かの境目に結構混沌とした部分があって、そこに潜む魔のようなものの濃密さが印象的です。恐るべきは人の中に巣食う魔か、それとも人ならざるもののそれか、いずれにせよそう簡単には割り切れない、どろりと後引くようなこの後味の悪さ。事件の詳細を伝える朝のワイドショー、その軽薄な空々しさとのギャップも含めて、湿度の高い不気味さを含んだ作品でした。
エロスとバイオレンス、ホラーとの親和性の高い二要素の、その絡み具合というか混ぜ込み方が好きです。