お化け屋敷は賑やかです

こめ おこめ

どこの世界も一日の始まりはあいさつから

 これはとあるゲームの中。0と1で創られた世界のお話です。


 「はい、集合!」

 顔が見えないまで伸びた黒髪の下半身がちぎれた女性が声を張り上げる。

 そうすると顔のないものや巨体のもの、動く芸術品等がわらわらと集まり始めた。

 「え~、今日はですね、以前から話していたアップデート前日です。そのため現在のバージョンをやっておこうという人が多くプレイされると予想されます」

 周りが今日は大変になるな等の愚痴をこぼし始め周囲が賑やかになる。

 「そんなわけでキーアイテムの落とす場所や出てくるタイミング等入念に確認してミスのないようにしてください」

 はーいと少し気だるそうな返事が返ってくる。

 「それと少し忙しいタイミングですが明日のアップデートで実装される人たちに現場を見てもらって少しでも慣れていただくよう来ていただきました。はい、それじゃぁ、あいさつして」

 そういわれると何人(?)かの化け物がわらわらと出てくる。

 「えっと、はい!髪の長い女βです!主に新規エリアの序盤を担当します!お願いします!」

 「えー、巨人βです。主にギミック部分を担当します。若輩者ですがよろしくお願いいたします」

 こんな感じでどんどん自己紹介をしていく。全員終わったところで

 「それじゃ役職の近いところについていってもらいます。先輩たちが実際にどんな風にうごいているかをよく勉強してください。それでは今日も一日お願いします」

 そんな感じで一日が始まるのであった。


                ☆

 ここはホラーゲームの世界。いわゆるフリーゲームというもので、無料ということもあり気軽に多くの人たちに遊んでもらっている。

 主な流れとして入館し、キーアイテムを集めて脱出とテンプレートな構成となっており、私たちの仕事は脱出の妨害とキーアイテムを順路に置いていき、プレイヤーがつまないようにするのが仕事だ。


 「私はここの現場監督みたいなものをやってるの。さっきの朝礼みたいに伝達したり、プレイヤーの動きをみながら現場の指揮をしたりね。といっても長い髪の女βさんは……長いからβちゃんでいい?」

 「はい!大丈夫です!」

 「ごめんね。で、βちゃんは私と同じ序盤の担当なので今日はその部分だけ見てもらえればいいかな。でもそのうち皆の指揮を執ることになると思うからそのことは頭の片隅に置いといてね」

 「分かりました!そういえばなんで序盤の私たちが指揮を執るんですか?こういうのってもっと終盤にでてくるボスみたいな人がやってると思ってました」

 「うーんとね……理由はいくつかあるんだけど一つは私たちは一番最初にプレイヤーを見れるじゃない?その人がどんな人かっていうのはこのゲームにおいてすごく重要なことなの。それをみて現場に指揮をしたほうが都合がいいの。といってもこれは実際に見てもらわないと分かりずらいかな。あとは……」

 「プレイヤーがきました!準備おねがいします!」

 「あ、きちゃったね。また後で続き話すね」

 

 どこの世界も朝はせわしない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お化け屋敷は賑やかです こめ おこめ @kosihikari3229

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る