第4話 - 55523AA3-2923-4C0F-A955-D540BA0BF942

「チェックポイント、『お風呂』作成」


 なんだかわからないが、俺の心臓がドキッとした気がした。


「……さっきからのその魔法、なんなんだ?」

「臆病者の保険です」


 エスは自信なさげに伏目がちに答えた。わからない。わからないが、なにか無視できないようなことが起こったような気がした。

 ……そういえば、玄関の鍵はかけただろうか。


「そしてもう一つ。保険を」

「ん?」

「私と一緒にお風呂に入っていただけませんか?」

「は?」


 └─*─┐


 俺はなぜこんな怪しい存在を助けようとしたのだろうか。わからない。単なる気まぐれとしか言いようがない。が、気まぐれにしては連続し続けている。気まぐれで家に上げ、気まぐれで匿うことを決め、気まぐれで一緒に風呂に入っている。

 この浴槽は2人が同時に入るには狭い。いくら相手が小柄な少女だとしても、いくら背中合わせだとしても。異性の存在を意識をしないわけではないが、俺の脳みそは先程から起きたいろいろなことでいっぱいいっぱいになっていた。


 エスの魔法はなんなのだろうか? わからない。「チェックポイント」とか「ブランチ」とか言っていた気がするが、その詳細はわからない。


 エスが逃げてきたというのは、なにからだろうか? そしてなぜだろうか? わからない。魔法使いにも対抗できないなにかしらがいるのだろうか。


 後ろのエスに直接聞けば良いのだろうが……。


 └─*─┐


 ピンポーン――。


 玄関のチャイムが鳴った。クリスマス・イブの二人目の来客である。全く、一人だけでももういっぱいいっぱいだというのに、なんだというのだろうか。そんなことを考えながら、俺は風呂から出ずに居留守を使おうとする。


「出ないでください」

「? 出るつもりはもともとないが、なぜだ?」

「きっと私を追ってきた奴です」

「……そうか」


「もしもーし!」


 玄関の鍵は確かかけてあったと思う。


「どなたかいらっしゃいませんかー?」


「いるのはわかってるんですよー?」


「ほら、VCS! 君がこの家に入るところを見たんだぞー?」


「ほら、君にしか世界は救えないんだぞー?」


 なんなんだ一体……なんてことを呑気に考えていたら、突如として轟音が聞こえた。

 風呂場の外、玄関の方からだろうか。


「チェックポイント『救い』までリセット」


 凛々しい声が背中の方から聞こえた…気がした。

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