第3話 事件

 それはあまりにも突然だった。Bくんの両親が、交通事故に巻き込まれ意識不明の重体、いつ目を覚ますか分からない状況に陥ってしまった。しかし、それだけではない。犯人は、Aくんの母親である。警察の話によると、Aくんの母親はその日、夫(Aくんの継父)と口喧嘩をしていたらしく、そのまま大量の酒を飲み、ほぼ意識がないまま、車を運転していたらしい。この事件でA家は、B家に大量の損害賠償を支払うこととなった。Aくんは病院内でずっとBくんと、意識のないBくんの両親に謝り続けた。Bくんは「お前のせいじゃない」と言っていたが、その声はとても震えていた。

 この事件はマスコミに報道され、Aくんは高校で「犯罪者の息子」と煙たがられ、再び虐められるるようになった。Bくんには連絡していなかった。どんな顔をすればいいか分からなかったからだ。また、Bくん自身も連絡しようとは思わなかった。内心かなり落ち込んで、両親が心配だからである。

 数日後、Bくんの両親の死亡が確認された。Bくんは、Bくんの家の近所に住んでいた親戚に引き取られるらしい。A家も葬式に招待されたが、行かなかった。行けなかった。彼の家族を殺した家族の人間が、堂々と顔を出せるわけがなかったからだ。そして、AくんとBくんはその日以降、しばらく連絡を取ることも、会うこともなかった。

 

 

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