第4話 秋に華咲く

 2004年の秋シーズンを迎え、スイープトウショウは秋華賞トライアルであるローズステークス(当時は芝2000m)から始動した。

 2004年当時は秋華賞トライアルでは唯一の重賞であり、秋華賞を狙う牝馬の有力馬の大半はここから始動していた。


 ここでのスイープトウショウはまずまずのスタートから中位グループに位置取り、直線で差し切る競馬を狙ったものの、最後は長期休養明けの影響もあってか少し伸び脚を欠き、勝ち馬レクレドールに及ばずクビ差の三着(二番人気)に終わった。

 しかしながらこれは展開のあやと呼べるようなものであり、決して将来を悲観するような結果ではなかった。三着とは言え首尾しゅびよく秋華賞への優先出走権を獲得したスイープトウショウは三度目の正直とばかりに、牝馬三冠レースの最後の一冠である秋華賞へと進んだ。


 2004年10月17日、秋華賞当日。京都競馬場は快晴だった。

 レース前に断然の一番人気に推されていたのはオークス後にアメリカ遠征を敢行かんこう(二着)し、秋はここに照準を合わせてきた桜花賞馬ダンスインザムードであった。

 スイープトウショウはそれに次ぐ二番人気で、ここに来てこれまでの実績を見直された格好になった。ちなみに三番人気はローズステークスでスイープトウショウに辛勝したレクレドールで、オークス馬ダイワエルシエーロは春シーズンの疲れが抜けきらずに戦線を離脱していた。


 レースが始まると人気薄にんきうすの逃げ馬フェミニンガールがレースを引っ張る形となり、ダンスインザムードは三番手グループで逃げ馬を見ながら追走する形を取り、スイープトウショウは例によって後方に位置取り、直線での追い込みに向けて末脚を温存する戦術であった。


 残り800mを切ったあたりで、それまで後方にいたスイープトウショウは早くも我慢しきれないといった感じで強引に前へと進出を始め、それにつられる形で他の各馬も動き始める。


 逃げていたフェミニンガールは最終コーナーを過ぎたあたりで失速し、代わって先頭に立ったのはダンスインザムードだった。この段階でダンスインザムードと後方のスイープトウショウとの差は五馬身近くも離れており、追い付くのは絶望的かと思われた。


 しかし、ここからスイープトウショウは驚異的な末脚を見せる。誰にも邪魔されず芝の状態も良い大外に持ち出していたスイープトウショウは、最後の600mを上がり33秒9で駆け上がり、一歩先んじてスパートをかけていた五番人気のヤマニンシュクルとともにダンスインザムードを並ぶ間もなく抜き去った。

 最後はそのヤマニンシュクルをも力づくで振り切ってゴールし、ついに待ち望んでいたG1タイトルを手中に収めたのだった。


 勢いに乗ったスイープトウショウはその後G1エリザベス女王杯(芝2200m)に挑むものの、流石に古馬との初対戦はつたいせんとなったここではやや分が悪かったか、エリザベス女王杯連覇に挑んでいたアドマイヤグルーヴの前に五着に敗れてしまう。ただし、同世代の馬の中では最先着さいせんちゃくを果たしてもいて、G1馬として一応の面目めんもくは保った格好になった。


 その後、年末の大レースを自重じちょうしたスイープトウショウは春シーズンに備えて長い休養に入った。

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