第21話 んもー!! 救国の女子高生、新子友花はいつも元気ですって!!
「じゃじゃーん!! これなーんだ?」
と言ったのは、東雲夕美である。
見ると、手にひらひらと1枚の紙切れを持っている。
「おい。……お前、こいつは何者だ?」
なんか、ちょっと引いている感じで忍海勇太が聞いた。
ここでだ!
忍海勇太の適当なその返事に、水素の核融合反応みたいに、ずばーん!!
……と反応した(意味不明……?)。
東雲夕美、彼が座っている席へズズッと寄って行って……机に両手を
バーン!!
「……………」
そのまま、前のめりになって忍海勇太を凝視した……。
「……やあやあ。あなたが、噂の友花の彼氏様ですか? これは、お初ですねぇ~」
「……え……ええ。……まあ、そうですけど。こちらこそ、はじめまして……」
忍海勇太が頭をペコリと下げた。
――そしたら、
「ゆっ、こら勇太!! てっ、適当なことを言うんじゃない!! あと、それと、いい加減にあたしのことお前って言うのをさ、やめーい!!!」
ズズッと席から立ち上がるな否や! 東雲夕美が言った“彼氏”というキーワードに、パブロフ並みの条件反射で反応した新子友花。
それから、顔を赤らめながら否定会見を……。
「かっ、彼氏じゃないってば! 夕美」
「ふふーん。友花がラノベ部に入部した気持ち、私、大切にするからね~」
よしよし、いーこいーこってな感じで、バクバクと慌てふためいている新子友花。
その彼女に向かって右手を手招きみたいに動かして……宥める東雲夕美である。
……パブロフだけにかな
「あ…、あんたは誤解してるんだってば!! あたしと勇太とは、そっ、そういう関係じゃないんだからね」
「あ~ら、そういう関係ってな?? どういう関係なのかな?」
首を横にちょい傾けて、ニヤニヤする東雲夕美。
一方で、
(こ……こいつは、や……やっぱり、うぜーぞ!!)
アハハハ……と、引きつった顔をしている新子友花。
「お前、どういう関係って、俺たち付き合っているんだから、いいじゃん?」
空気を読まない、いまいち読めないのか、忍海勇太。
「だから、お前言うなー!! バカかお前は!!! あたしたち付き合ってないんじゃい!!!!!」
新子友花がRPGで、混乱の魔法を掛けられたようにパニックになったぞ!
「お前だって、お前って言ってるじゃないか」
「友花………、仲がおよろしいことですね~」
「だからさ、そういう関係じゃなーいってば」
上から順に、忍海勇太と東雲夕美、そして新子友花である。
――いいか!
今からお前たちに掛けられた、この悪しき魔法を解除するために、俺が今から飛び立って、お前たちの魔法を解除するために、必要な友人達をここに連れてくる。
だから、連れて来るまでは、どうか、お前たち頑張ってくれ。もう少しの辛抱だ!!
ズバババーーーん!!
新子友花よ! さあ! 連れてきたぞ!
「……いつもいつも、応援してるわよ。新子友花さん!!」
「私たちはさ、固い友情で結ばれているんですからね。友花!!」
「そうだよ、友花お姉ちゃん!! お姉ちゃん!! あたしはここではウソはつかなーい!!」
上から順に、大美和さくら先生と神殿愛、そして、聖人ジャンヌ・ダルクの子供バージョンである。……最後の隠れキャラクターは、作者からのサービスです。
――新子友花よ。お前にしかラスボスは倒せないのだよ。
ラスボスの魔力に立ち向かえるのは、新子友花よ、お前の身体に身についた魔力への耐性と古から継承されてきた究極魔法のパワーがあるからだ!!
その力でしかラスボスには勝てないのだから……。
「そ、そんなこと言われても……。あたしにそんな能力なんて……」
あるんだよ。あるんだから
ズバババンッ ズババン ズバット……… ?
……はははん。
よくぞ、お前はその『賢者の金剛石』と『白夜の玉』で、俺さまの魔力を抑えることに成功したな!
敵ながら褒めてやる。
しかーし!!
大魔王・忍海勇太は正体を現した!! そして、宇宙の法則が乱れる!!
「こ、こら!! 勇太!!! あたしのことをお前って言うな~」
またまた、でたね!!
でれでれでれっ!
(魔法の効果音ですよ)
新子友花は、究極魔法ナザリベスを唱えた!!
「やったー! やったー!! やったね、お姉ちゃん!! もう勝ったも同然だよ」
ボワワン……
どこからともなく、聖人ジャンヌ・ダルクさまの子供ヴァージョンが姿を現した。
「この魔法はね、この世界で究極的な破壊魔法なんだから!! そのパワーは、お姉ちゃんの魔力をすべて開放して、そのエネルギーを水素の核融合反応みたいに変換して、敵にぶっつけっちゃう! すんごーい魔法なんだから」
だから、それって、あの名作RPGの魔法ですよね?
「おのれ、新子友花! いい加減、お前は俺と付き合えって!!」
大魔王・忍海勇太がもがきながら本音を言い放った。
「んもー!! だからお前言うなって、勇太!! この究極魔法は、勇太へのお仕置きなんだからね!!」
や、やめーい!! お前……
やめなーい!!
お前……
だから、お前言うなーーーーーーー
なにこれ?
――RPGヴァージョンは、これくらいにします。
「……ってさ、夕美? あんた、何しにラノベ部の部室に来たの?」
妄想癖じゃないけれど、我に返った新子友花である。
「そりゃ、友花!! あんたと、この忍海君とのラブラブな関係をさ、間近でじっくりと見物するためですよ~」
と言って、
だからさ、これこれ!
さっきから手に持っている1枚の紙切れをひらひらさせながら、
「この入部届で、私も晴れてラノベ部の部員になりまーす!! 不束者ですけれど、よろしくね♡」
「な! にゃんとな!! 夕美、あんた、何考えて」
「……実は、今日から私、ラノベ部に入部しちゃったんだな!」
「へ? あたし聞いてないよ」
「今、言ったじゃん!! 友花ちゃ~ん」
「はい!! 東雲夕美さん。ラノベ部へようこそ!!!!」
ガラーっと、部室の扉を開けながら、大美和さくら先生が言った。
「あ! 先生!! これから、よろしくお願いしますね」
東雲夕美は大美和さくら先生に、はいこれ! という軽快な感じでラノベ部の入部届を手渡した。
「ええ、こちらこそ!!」
大美和さくら先生は、入部届を受け取りながら、
「先生としても……部員が増えることは、とても嬉しいことですからね。ふふっ!」
先生、そう言いながら新子友花の隣の自分の席に座る。
「……せ、先生ってば、夕美を入部させたんですか?」
居たたまれなく、新子友花が先生の席へと駆け寄った!
「ええ、そうですよ。何かいけませんか?」
先生は、ニッコリと微笑みながら返答した。
「……先生ってばさ、そりゃないですって」
へなへな……なんだかガクッと力が抜けちゃった新子友花だ。
「何か……いけないことでもあるのでしょうか??」
大美和さくら先生は新子友花のそのリアクションに、少し首を傾けた。
「……いいえ。先生が顧問なんだから。別にいいんですけれど」
しぶしぶな……新子友花だ。
まあ、君に入部可否の決定権はないしね……。
「んじゃ~友花!! これから、よろしくね~!!!!」
と、東雲夕美――
先生の席へ駆け寄っている新子友花に、自分も駆け寄って両肩に両手をポンっと乗せて言った。
「……………」
無言で憮然とした表情で、東雲夕美を流し目する……新子友花。
「そうそう! 東雲夕美さん。あなたの席は……」
立ち上がった大美和さくら先生。
部室の後ろにあった予備の机を……『よっっこいしょ!』と両手で持ってきて……すると、
「あっ、先生! 私もやりまーす」
と、東雲夕美は大美和さくら先生のもとへと急ぎ足で向かった。
「じゃあ、一緒に運びましょうね」
先生はそう言いながら、
んしょ…… んしょ…… んしょ……
二人一緒に机を運んだ。
「――はい! ここが東雲夕美さんの席ですよ~」
「はい、先生。サンキューです!!」
見ると、新子友花と神殿愛のすぐ隣、まるで給食時間の時のように、東雲夕美の机を2人の机に対して90度向きを変えたポジションである。
つまり、東雲夕美の席からは――右に新子友花、左に神殿愛という席位置となる。
「私の席だよ~」
自分の席に座って、足をバタバタとする東雲夕美である。
(君は小学生か……?)
「みんなー! ごきげんよう!!」
――次にガラガラっと部室の扉を開けて、中に入ってきたのは神殿愛である。
「あらっ、生徒会長の神殿愛さん。どうですか? 生徒会の様子は?」
大美和さくら先生は振り返り、扉から向かってくる彼女を見た。
「先生!! も~これがね、大変なんですよ」
神殿愛は歩きながら、
「生徒会ってね、生徒会の何人かがテーブルを囲んで、いろんな話し合いをしているイメージだったんですけどね。……なってみれば書類整理の連続なんですよ。これがもう大変で……」
彼女の席は新子友花の向かいである。
「でもね、でもね! 私、頑張りますから!! うん。選ばれたからには頑張らないとね」
自分のカバンをドスンッと置くと、笑顔で大美和さくら先生に……なんだか嬉しそうに生徒会の情景を教えたのだ。
「そうですか! それは大変そうですね? 頑張ってくださいね♡」
大美和さくら先生はそう言って、神殿愛にもニッコリと微笑んで――
そんな中――
「なあ、なあ?」
ってな感じで、忍海勇太が新子友花の席に向かって、前のめりになって聞いてきた。
「えっ? なに??」
っていう感じで……新子友花は右斜め向かいの忍海勇太を見た。
「な、何よ? 勇太……」
「……俺さ、いろいろと考えたんだけどさ」
ひそひそっていう程ではないけれど――忍海勇太の声はなんだか『ここだけの話でな……』みたいな口調だ。
「お前って、やっぱ俺と付き合う運命なんだよ。なんかありがとなっ……」
彼はそう言うと納得したのか? 自分の席へと戻って着席した。
それから、カバンから自分のラノベ小説を取り出して、無言で読み始めた……。
どうして、こんなこと彼は言ったのかな? 意味不明だ……。
「……ちょっと、勇太ってば!! 意味分かんない!! 勘違いしないでよ!! なんでさ、あたしが勇太と付き合うってーの?? バッカじゃない???」
新子友花も、当然そう思っていた。
例えるならRPGの戦闘シーンで、いきなり魔法で戦線離脱させられたようなパニック状態。目が覚めたら、異世界に来てました! のような感覚になっている。
忍海勇太は冗談で言ったのか――? それとも本気だったのか――?
分らんぞ……。
「え~? なになに? ねぇ勇太様?? なんか面白い話かな……」
神殿愛が隣の席の忍海勇太に聞いた。
でも、生徒会長として忙しい毎日を過ごしている神殿愛よ。知らない方がいいよ……。
聖ジャンヌ・ブレアル学園のためにも、ラノベ部のバットエンディングに成りかねない内容なんてね。
すると――
新子友花と忍海勇太とのやり取りを、傍から見ていた東雲夕美が、
「……友花も彼氏君も、仲が良いですねぇ。なんか羨ましいね……」
生徒会長まっしぐらの神殿愛がいるラノベ部の部室で、その余計な“彼氏”というキーワードを――
おいおい! あんたが最初にこの話題を吹っ掛けたんだろってば!!
(作者も思わずツッコミを入れたくなったぞ! 東雲夕美さん)
「んもーん!!」
……大美和さくら先生の『んもーん!!』久しぶりに聞くことができました。作者は感動……。
「新子友花さん! 忍海勇太君! 神殿愛さん! 東雲夕美さん! みんな仲良くしましょうね!!」
ラノベ部員4人に『教育的指導』をする、大美和さくら先生である。
すると――
「だから、仲良くしてるってば、大美和さくら先生!!」 新子友花である。
「俺もさ、仲良くしてるってば、大美和さくら先生!!」 忍海勇太である。
「私もね、仲良くしてますってば、大美和さくら先生!!」 神殿愛である。
「みんな、仲良くしてますってよ、大美和さくら先生!!」 東雲夕美である。
「……………」
しばし無言になり、順番に4人の顔を見つめる大美和さくら先生。
「……あらあら、みなさんそうでしたか!! 先生の早とちりでしたか??」
自分の頭を拳で軽く……コツンとして見せた大美和さくら先生。
「……先生はね、みなさんが仲良しであることが、なにより、とても嬉しいのですからね!!」
ふう……
肩で大きく息を吐いた大美和さくら先生。――いつものように、微笑んだ顔を見せてくれた。
(青春まっしぐらか……いいことですよ♡)
だけれど心の中では、こんなことを思っていたりして――
「……ところで、友花よ」
「んもー!! なんで、そこは『お前』じゃなくて『友花』って言うのよ」
「……んで、ところでって、勇太…………………なに?」
「…………………ん、俺は何を言おうとしたんだっけ? あっそうだった!」
「お前、俺と、やっぱ、やっぱり付き合えって」
「んもー!! ゆ・う・たの、ゆ~たの、ゆうたの、勇太の…………、こんのバカーん!!!」
「んもーん!! 新子友花さん。人に向かってバカって言っちゃいけませんよ」
大美和さくら先生から、なんか自分だけ怒られちゃった新子友花だ。
「そーだ、そーだ。新子友花、お前、言っちゃいけないんだからな!」
すると、忍海勇太が新子友花に対して、意地悪っぽくそう言った。
懲りてないのか――? それともワザとなのか――?
やっぱし、分らんぞ……。
ねぇ? 読者様は、どちらだと思いますか??
……こんにゃろめが! 勇太め!!
ホントにあたしの青春を、青春を……勇太め!!
しか~し!! てってれってて~
新子友花が思い続けてきた忍海勇太への恨み――もとい反感。それを、いつの日か必ず――必ず退治することができてしまう秘密道具。その名前は、
『セブンオーオー!!』
――これを新子友花が飲んだら、言ったことが、すべて! ホントになっちゃうんだぞ!! けっこう怖いんだからね!
「セブンオーオー飲んじゃった……。んもー!! あたしは勇太のことが、だ~い好き!!」
(書いちゃった。ホントになるんでしょ?)
「んもー!! なんて恥ずかしいこと書きやがる? 作者!! あんた、勢いだけで書いてるだろ?」
(はい! そのようですね~♡)
続く
この物語は、ジャンヌ・ダルクのエピソードを参考にしたフィクションです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます