第1話 「日常」



嘘、偽り、道化、これが彼女、雫姫柊彩(シズキヒイロ)を作っていた。

彼女の中で嘘や偽りは自分を着飾るアクセサリーだった。


いつからだったか、そんなふうになってしまったのは…

そんなこと今はもう覚えていない


ただ今ひとつ言えるのは、嘘は美しい。

自分を色んな仮面で偽ることが出来る…

それはいい事だ。なぜならそれでみんな喜んでくれるから。

今はいないあの人たちはそうだった。


「ひ…さん…」


声が聞こえる。


「柊彩…ん!」


私はまた偽らなきゃいけないのか?


「柊彩さん!!」


その声に目が覚める。


「柊彩さん!大丈夫ですか!会議終わっちゃいましたよ!」


会議…そういえば会議があったようn


「は?会議終わった!?」

「はい?会議中に柊彩さんぼーっとしてましたけど、大丈夫ですか?話聞いてました?」


どうやら会議中にぼーっとしてたらしい。

やばい…途中から何も聞いてない


「悪い。司少佐…なんの話しだった?」

「珍しいですね。柊彩さんがぼーっとしてるなんて。ふふっいいですよ。資料は持ってますね。説明します!」


今は2100年。5年前、日本には各所に【異界の扉(アナザークラック)】というヒビが入り始めた。

そのヒビからは我々人間が住む第3世界とは別の第2世界という場所に住む妖怪共が出てきて人間を襲っている。

妖怪が現れて世界が混乱している時にグループが出来た。

そのグループの成り上がりを政府は東京の都市に「怪異対策本部」(Phenomenon Countermeasures Headquarters)略してPCHを作った。

PCHには、倒した妖怪によって階級が決まっている。

柊彩は12の頃PCHに入り、5年間妖怪を倒して階級は中佐だ。


そして、先程から説明しているこの男は楠司(クスノキツカサ)である。

彼の階級は少佐で柊彩の部下である。

司は柊彩と同じ【日本怪異兵隊学園】というPCHに入る予定の学生、入っている学生年齢の隊員のみ入ることを良しとされる学校で同じクラスの生徒である。


「我々雫姫隊は中央区と千代田区の見回り…わかった。ありがとう。司少佐」

「もう〜司でいいといつも言っているじゃないですか。同じクラスで席が隣なんですし。」

「ここではそれも関係ない。ここはそういう場所だ。馴れ合いはいらないだろ?」


こいつはいつもそうだ。いつもニコニコしていて、馴れ合いを好む。

私はそういう奴が嫌いだ。馴れ合いなんて、戦場では邪魔になるだけだ…

いつか妖怪に奪われ、荒れた心は神器に乗っ取られてしまう。



ちなみに神器とはその名の通り、神の力が備わった武器のことである。

神の力が備わっていると普通の武器とは違い、耐久力があり能力が備わった不思議な武器である。

一見「その武器みんな持てばいい」と思うが、安定してない精神でその武器を持つと精神を神に乗っ取られ自我を破壊されてしまうのだ。



そんなことになるくらいなら最初から馴れ合いなんてしなければいいのに

だが、世界がそれを許さない。

だから私は偽って普段を過ごす。


弱さなんて消して……



「さぁ、司少佐。見回りに行こう」


そう。そうやって今までもやってきたじゃないか


それが僕の日常なんだから

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百鬼夜行 黒猫 @kironeko

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