　とある２枚のCDが今ネット上で話題になっている。理由はジャケットに使われている写真にある。

一方は1992年に発売されたもの、もう一方はそれから約30年の時を経てファンからのリクエストもありリマスターされて再販されたものである。

　この2枚のCDのジャケットは一見、基本的に構成などは同じに見えるがよく目を凝らして見てみるとすぐ違和感に気がつくであろう。

　同じ人物がジャケットを飾っているように見えて実は違う。最初はなるほど、年齢が違うのかと思うかもしれない。

　古い方のCDに写っている女性は年齢が高校生、少なくとも未成年であるように見える。そして新しく再販された方の年齢は明らかに成人している年齢である。おそらく20代前半、どんなに高く見積もっても25、6歳くらいといったところか。

　この再販されたCDは他にも5枚のアルバムがボックスセットになって発売された。その特典の一つに、ファーストアルバムのジャケットをリニューアルしたという少し珍しい形の特典が付けられた。

　購入した者はこういう事かと最初は納得したものの、またしても直ぐにおかしい事に気がつく。もしも同じモデルを採用しているのなら現時点でこんなに若い事はあり得ないと。

　だがこの二つのジャケットを見比べてみても瓜二つ、きっと年齢を重ねた姿なのであろうと誰もが思うくらい酷似している。

　この二人は同一人物なのか、それとも、もの凄く似た別人なのかネット上で議論が起こった。音楽ファンのみならずオカルト、ミステリー好きの人も興味がそそられた。瓜二つの人物と言えばドッペルゲンガーという言葉も連想する。

　この現代でもそのような体験談、目撃談はあるようで、幼稚園に通っていた頃、ある男児が園内にある絵本を持って来てこう言った「これ、お前に似ていない？」その絵本の表紙はイラストではなく実写の女児が使われていた。花畑の中に佇み笑顔を向けているその子は確かに自分にそっくりだと思い寒気がして、その時は怖くなりよく見ずに無言でその場を立ち去ってしまったが、今思い出してみるともう一度その絵本を見て確かめたい気持ちもあるが本のタイトルも分からないので今では確かめる術はない。

　もう一つ例を挙げると、高校時代によく中学生向けの学校説明会のスタッフをやっていた。その中に同じ中学校に通っていた同級生にあまりにもそっくりな人物を見つけて目を疑った。当然、そのような場所には既に高校に進学している同級生がいるはずはないのだがあまりにも似ていたのであれはあいつじゃないかと何度も脳が訴えていた。今でもやっぱりそう思ってしまうらしい。

　販売したレコード会社はこの点に関しては皆さんのご想像にお任せしますと敢えて答えは出さなかった。なぜ真実を明かしてくれないのか、これには何か驚くべき秘密があるのではないかとますます知りたい欲求が高まる。

　考えられるのは同一人物であるがこの写真を撮ったのはだいぶ前、モデルがその年齢の時に予め撮られたもの、偶然にも似ている人物を見つけたが先ず挙げられる。

　前者はあまり考えられなかった。なぜここまで同じ構図、衣装でまた撮る必要が当時あったのか。リマスター版が再販されるのが決まってから撮ったというのが普通である。

　なら後者、外見的特徴が似ているが別人である。ここまで似ていると姉妹か？　とも言われたがやはりそのような間柄でここまで若い事は考えられない。むしその娘ぐらいの年齢なのだから。

　このモデルを務めたのは誰なのか、その情報も同梱されているブックレット等に載っていなかったのが余計に活発な議論に拍車をかけたが唐突にこの人じゃない？　という指摘でそれはあっけなく解決された。

　この謎に包まれていると思われた人物は普通にツイッター、インスタのSNSを使い自撮り写真を挙げていた。普段はOLとして働いているがそのあまりにもの美貌でフォロワー数は一万人を超えていてちょっとした人気者である。現にたまにモデルの依頼も引き受ける事があるらしい。

　この事実が広まり正式にこの度のリニューアルしたCDジャケットのモデルを務めさせてもらったとツイッター上で明かしてくれた。どうやら前のモデルとは血縁関係はなく、単純にやはり似ているという事で依頼が来たと話してくれた。

　真相が明らかになったとはいえ特に驚きはないオチだったので野次馬達は落胆した部分もあったが、では古い方のモデルは今、何をしているのだろうか？　というところに今度は興味が移った。これについて新しいモデルを務めた女性は詳しく聞かされていないらしい。ただカメラマンも現在は消息が分かっていないとだけ言っていて、だから余計に偶然、このツイッターアカウントを発見した時は驚愕したとは語ってくれたとのこと。

　ネット上に点在する優秀な特定班と言われるような人もこの人だ、と言える人を見つける事はできなかった。その撮影をしたカメラマンにも突撃してみたが、これについてはノーコメント、返事はない。

　これ以上、進展はないと分かるとこの話題も徐々にフェードアウトしていき、次の面白い話題へと人々は移っていく。しかし、いずれにせよここまで似た人物がいるという事実に誰もが驚かされインパクトは残した。これからも度々、この騒いでいた人達によって語られることであろう。現にこの騒動がきっかけで古いジャケットのアルバムの方は中古価格が高騰した。これまでは5百円前後で売られていたのが今では８千円から１万円と１枚のCDに出す値段ではなくなっている。供給はもうないため今後も値上がりが予想される。このように再販されたにも関わらずオリジナル盤の値段が上がるという異例の現象が起きている。普通は逆なのだが。　

　この二人の女性を目の前にカメラを向けたカメラマンにはいつかその消息不明のモデルとどのようにして出会ったのか、撮影に至るまでの経緯などを話してほしいものである。ちなみに最後に一応、明言しておくがこの２枚の写真を撮ったのは同一人物でもある。