79日目 『何故ベオウルフは死ななければならなかったのか』
このような話を知っているだろうか。
ある所に、一匹のドラゴンが居る。
そのドラゴンは洞窟に巣を作って暮らしている。
その巣の中には沢山の金銀財宝があり、ドラゴンはそれを大層大事にしている。
その巣に、ひとりの男が足を踏み入れる。
その男は洞窟の近くにある国の住民で、何らかの悪事を働いて罪に問われ、そこから逃亡した身だ。
どんな罪か?
それは定かではない。
別に重罪とかではなく、大したことではない、些細な罪なのかもしれない。
大したことのない、些細な罪でも、居場所を失うことはある。
話を元に戻そう。
で、その男は逃亡した先で、偶然ドラゴンの巣である洞窟に辿り着く。
そこには沢山の金銀財宝がある。
しかも、ちょうどそのときドラゴンは大きな寝息を立てている。
これは僥倖と、その男は巣から宝を一部盗み出す。
そこから事件が起こる。
目覚めたドラゴンは宝を盗まれたことに気づいて怒り狂い、報復のために人間たちの国へと襲撃を掛ける。
その国にはベオウルフという王がいる。
ベオウルフは既に老体だったが、勇猛果敢な人物として知られた傑物で、襲ってきたドラゴンとの戦いに臨むことになる。
死闘の末、ベオウルフはドラゴンを討ち倒すが、同時に自らも致命傷を負う。
死が間近に迫ったベオウルフは、部下に、ドラゴンの宝を確認するよう告げる。
部下が宝が手に入ったことを告げると、ベオウルフは、これで国や民が豊かになるに違いないと満足し、息を引き取る。
そういった話だ。
この話には、昔から疑問に思われている点が一つある。
それは、“何故ベオウルフは死ななければならなかったのか”という点だ。
だって、そうだろう?
別に、ベオウルフがドラゴンを倒して、宝を持って生還して、それでみんなが豊かになって、めでたしめでたし。
そういう終わり方でも良かったはずだ。
例えば、桃太郎などはそのような形で終わっている。
では、何故ベオウルフは死ななければならなかったのだろうか?
これは専門家の間でも意見が分かれるところだが、
わたしとしては、一つ自分なりの見解を持っている。
結論から言おう。
このベオウルフの物語は、マネー・ロンダリングをテーマにしたストーリーだ。
順を追って説明しよう。
まず、ドラゴンが財宝をため込んでいるという部分。
冷静に考えてみてほしい。
ドラゴンにとって金銀財宝というのは使い道があるものだろうか?
金貨を使って買い物をするだろうか?
土地や不動産を購入したり、株式に投資したりするだろうか?
しないだろう。
つまり、ドラゴンがため込んでいる財宝というのは、“使うことができない財産”を象徴している。
そのような解釈が可能だ。
使うことができない財産とはなんだろう。
これはつまり、不正なやり方で取得した財産、と考えられる。
例えば、誰かから奪い取ったものとかね、
そうなると、ベオウルフが生きて戦いに勝って、宝を手に入れたというストーリーにできなかった理由も見えてくる。
それだと、ベオウルフがドラゴンから奪い取ったという形になってしまうからだ。
略奪は不法行為だ。
略奪で取得した財産は正当に運用することができない。
だから、ベオウルフは死ななくてはならなかった。
つまりこういうことだ。
ベオウルフは、自らの死によって、損害賠償を獲得したのだ。
順を追って説明しよう。
まず、何かしらの不正なやり方で財産を取得した存在がいる。
便宜上、存在Dとしておこうか。
その存在Dは何らかの形でマネー・ロンダリングを行い、不当に取得した財産を洗浄できないかと考えている。
そこで考え出されたのが、事故を起こして損害賠償を行うという形で財産を移動させるというものだ。
恐らくは、自動車事故だろう。
物語内の描写で、ドラゴンは極めて体表が頑丈で、切りつけてた剣が折れてしまったというくだりがある。
これはドラゴンが車両であるという解釈を可能にしてくれる。
ベオウルフがドラゴンと戦って相打ちになったというのは、ベオウルフが自動車と衝突して、ベオウルフは致命傷を追い、自動車は廃車になった。
そのようなことだと解釈できる。
そしてベオウルフの遺族は損害賠償を請求し、存在Dはそれに応じる。
もちろん、ここで遺族と存在Dは裏で繋がっている。
これによって、存在Dはマネー・ロンダリングに成功。
ベオウルフの遺族も、それに応じた分け前を得られた。
そのような話だと解釈できる。
その車両を運転していたのは、誰だったのか?
それは最初に出てきた、逃亡中の男だろう。
この男は過失運転致死で実刑を食らうことになるだろうね。
リスキーなポジションではあるが、出所後に相応のポストが用意されるという取り決めなのだろう。
よくあることさ。
何らかの罪で居場所を追われて逃げてきた人間が、不当なやり方で利益を得る存在と接触し、その手足となる。
この世界ではよくあることなんだ。
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