第181話 カレー事件
学院に戻ると校長室に直行した。
「ただいま戻りましたー!」
「おかえりなさい。
「校長先生も人が悪い。あんなサプライズ心臓に悪いですって」
「ふふ。その様子だと気に入られたみたいね」
「え? そういえば、そんなこと言ってたような……」
「中原理事長に気に入られることはそうないわ。良かったわね」
「そうなんですか? 色々とお話させてもらいました」
「あの人、少し高圧的な話し方でしょう? 緊張しなかった?」
「大丈夫でしたよ。とても気品ある方でした」
それに、高圧的な物言いする奴らとは仕事で何度もぶつかったからな、そういう緊張は俺には効かない。
「ねぇ、かえでさん」
「え?」
「もし良ければ、本当にこの学校に通ってみる気はない?」
「私が、三ツ矢女学院に?」
そうか、俺は事情あって学校にあまり来れないという設定になっている。だから人形に代理を頼んでいるわけだが、北見校長は姫嶋かえでに通って欲しいと思ってるのか。
「申し出はありがたいんですけど、ちょっと難しいですね……」
「そう。でも、まだ中学生だもの。気が変わったらいつでも言って下さいね、席はあるんですから」
「はい。ありがとうございます」
こんなに良くしてもらって、俺自身は正直なところ通ってみたいとは思う。だが仕事抜きしても女子耐性0の俺には難しいだろうな……。
「それとね、一つ残念なお知らせがあるの」
「なんですか?」
「カレーが無いのよ」
「……え?」
「実はね、カレーを作ってるお店から本日の提供ができないと連絡があったの」
「ということは、私だけじゃなく?」
「ええ。楽しみにしていた全校生徒も食べれないのよ。それで急遽別のお店を探してるんだけど、今からはなかなかねぇ……」
現在11時過ぎ。三ツ矢女学院中学校の生徒数は660人。確かに今からカレーを用意してくれと言われて用意できる店なんてそうないだろう。
「それは確かに難しいですね……」
「ごめんなさいね、姫嶋さんも楽しみにしていたのに」
「いえ、私は食べようと思えばいつでも食べれますけど」
「あら、いつでもは食べれないわよ」
「え?」
「このカレーは三ツ矢女学院のために作られる特別製なの。だから一般販売はされてないのよ」
「そうなんですか!?」
「いつでも食べれるというのなら、在校生のほうね。カレーは毎月の特別メニューですから」
「な、なるほど」
ということは、今日を逃せば俺はもう一生味わえないってことか!?
「ちなみにどうしてカレーが納品されないんですか?」
「うーん、その理由がよく分からないのよ」
「と、言いますと?」
「カレーが消えたんですって」
「はい?」
話によると、カレーは作ってあり、納品に間に合うはずだった。ところが先ほど確認したら寸胴ごと無くなっていたという。
「ず、寸胴ごとですか」
「ねぇ? あんな重いのを盗むなんて」
「……もしかして、魔物の仕業とか?」
「いいえ、魔物は魔力にしか反応しないはずよ」
「ですよね……。警察には通報したんですか?」
「まだよ。できれば警察沙汰にはしたくないの」
「例の信用問題ですか?」
「ええ。お互いにね」
店の信用と学校の信用か。警察が介入しないのなら俺が行っても問題なさそうだな。直接現場を確認しに行くか。
「現場を見に行ってもいいですか?」
「調査したいの?」
「はい。楽しみにしてる生徒のためにも」
「うーん。でも姫嶋さんは……」
「分かってます。けど、今動けるのも私しかいません」
「そうねぇ……。それじゃ、お願いしていいかしら?」
「はい! それと、ダメ元で保険も掛けておきます」
「保険?」
「はい。当てになるか分からないので、また後ほどお話しますね」
「分かりました」
というわけで、急遽俺がカレー消失事件の調査をすることになった。その裏にとんでもない思惑が隠れているとも知らずに……。
To be continued→
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