第175話 救出と謎の声
リネさんを連れて異空間のあった路地裏に戻るが……。
「ここです! ……あれ? 確かここに異空間の入口があったはずなのに」
「塞がったのかしら?」
「開けてみます。ピュアラファイ!」
先ほどと同じように撃つと、今度は空間に当たらず、ただ空へと撃った形になった。
「そんな! さっきは空間の歪みが現れたのに!」
「移動したのね。ラジオネの巣は本部のレーダーでも見つけるのが難しいわ」
「どうしたら――!」
ふと、さっきの声を思い出した。
「そうだ、あの人なら!」
「あの人?」
「私に異空間の入口を教えてくれた人がいたんです」
「どんな人?」
「それが、突然個別通信を飛ばしてきて、姿は見てないんです」
「それじゃ、声は? 聞き覚えなかった?」
「そういえば……どこかで聞いたような……」
どこだ? どこで聞いたんだ?
「うーん……。思い出せない!」
「とにかく、本部に応援を頼みましょう。一刻も早く巣を探さないと」
「そうですね。じゃあそちらはお願いしていいですか? 私は私で探してみます」
「分かった。気をつけてね」
「はい!」
くそ、こんなことなら無理してでも全員で一気に脱出したほうが良かったな。
「待てよ……? 探し物のスペシャリストがいるじゃないか!」
魔法通信で呼び掛けると、ほどなくして応じてくれた。
「紫! 今動ける!?」
『どうなさいました?』
「新人研修に来てた小学生と優海さんが魔物の異空間に閉じ込められて行方不明なんだ! リネさんが言うにはラジオネって魔物らしい!」
『分かりました。その異空間を見つければいいんですね?』
「さすが紫、頼りになるよ」
『……』
「どうしたの?」
『いえ、なんでもありません。では座標が判明次第、位置データを送ります』
「ありがとう!」
これで位置は分かるはずだ。
それにしても、あの声どこで聞いたんだ?
『マスター、座標が届きました』
「え? もう!?」
『マップに表示します』
「そう遠くないな。よし!」
急いで座標の位置に向かうと住宅地のど真ん中だった。
「こんなところに……」
住宅に当たらないよう、仰角で狙う。
「ピュアラファイ!」
今度は手応えがあった。さっきと同じように空間がひび割れる。
「やった!」
早速リネさんに魔法通信で伝えると、すぐに飛んで来てくれた。
「ここです!」
「すごい! どうして分かったの?」
「廷々さんに協力してもらいました」
「ああー! なるほどね、さすがの人脈だわ」
中に入ると、優海さんが床に倒れていた。
「優海さん!」
「私に任せて! かえでちゃんは捕まってる子を助けて!」
「えっ、でも私の
「大丈夫よ、私がサポートするから。それに早く助けないと危ないわ」
「分かりました。リネさんのタイミングで指示してください」
「え?」
「一気に片付けます」
「……分かった」
リネさんが優海さんの治療をしてる間に、術式を展開する。
「いいわよ!」
「行きます! ランページ・ピュアラファイ!」
白銀の太いレーザーが所狭しと暴れ回り、あっという間に部屋を浄化してしまった。
「すっご……」
「ふぅ、なんとか上手くできたかな」
「私も色んな魔法少女見てきたけど、かえでちゃんは別格ね。よし、脱出!」
「はい!」
異空間を出ると、リネさんと一緒にすぐ本部の医務室へと向かった。
「はぁ、はぁ……」
「あら、もうバテたの?」
「こんな人数抱えて飛んだことなかったので……」
「魔力はすごいのに、体力はないのねぇ」
「うっ……」
「魔法少女は体力も必要よ。鍛えれば肌艶も良くなるし、損ないわよ」
「あはは……そうします」
中身のおっさんも運動不足だしな、がんばってみるか。
「そうだ、紫に報告しないと」
スマホで「無事見つかって助けることができたよ。ありがとう」と送ると、すぐに「お役に立ててなによりです」という返信と、可愛らしいグッジョブのスタンプが送られてきた。
そういえば、結局あの声については分からないままだったな。
「誰だったんだろ?」
* * *
「……」
「なんや、無事やったんか?」
「そのようだ」
「しっかし分からんなぁ、なんであの子がお気に入りやねん。確かに魔力はごっつうある。せやけどまだまだひよっ子やないか」
「金の卵ってやつじゃない?」
「ウチらに必要なんは即戦力や。卵やない」
「それに、まだ他にも候補者いるんでしょ?」
「ああ。姫嶋を含め3人いる」
「他の2人も金の卵なんか?」
「いや、一人は50キロメートルエリア担当。もう一人は10キロメートルエリア担当だが、すでに
「ならそのどっちかでええんちゃうの? イヤやでウチ、ひよっ子に歩き方から教えるんは」
「ていうか、なんで優海は入れないの?」
「あかんあかん、優海は
「なんでだろうね? 実力は十分あるのに」
「彼女の正義が、それを許さないんだろう」
「ふーん?」
「難儀なやっちゃのぉ」
「それで? 姫嶋はまだ候補者なの?」
「ああ。まだしばらくはな」
「さてと、そろそろ戻ろうや。さすがに見つかってまうで?」
「そうだな」
――もっと成長してくれよ、姫嶋かえで。
To be continued→
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