第172話 再会

「なあ、ぷに助」

「スレイプニルだ。なんだ?」

「呪いって、本当に解除不能なのか?」

「呪い? よく知ってるな」

「さっき北見校長に教えてもらった」


 仕事へ向かう最中に、呪いについてぷに助に訊いてみたいことがあった。


「解除不能かと問われれば、その通りだ。故に呪いと呼ばれておる」

「それってピュアラファイでも無理かな?」

「なぬ?」

「ほら、小山内さんの毒をピュアラファイで浄化できたろ? 同じ要領でさ」

「言わんとすることは分かる。確かにピュアラファイはまだ未知の部分が多い魔法だ。しかし現状は不可能だろうな」

「じゃあ、もっと研究すれば」

「そんなものは技術班に任せておけばよい! 今は目の前の仕事に集中しろ!」

「なんだよー。ていうか仕事ってなにするんだ? 昨日みたいにお手伝いか?」

「いや、今日は少々事情が違う」

「どういうことだよ?」

「今日は本部に行ってもらう」

「本部?」


 事務仕事かなにかか?


 *   *   *


 ――本部。訓練棟。


「久しぶりに来たなー」

「お前はここで新人研修に付き合ってもらう」

「へー、新人研修ってこんなところでやるのか。……はぁ!?」

「反応遅くなったか?」

「いや、芸人のボケとツッコミやってるんじゃないんだよ。私が新人研修に付き合うってどういう」

「私がお願いしたの」

「優海さん!」

「久しぶり、かえでちゃん」

「優海さーん!」

「ふふふ、かえでちゃん甘えん坊さんになった?」

「えー? そんなこと――ハッ!」


 気づいたら優海さんに抱きついて谷間に顔を埋めていた。一気に変な汗が出る。


「あべばばわぁ! ごごごめんなさい!」

「どうしたの? ふふ、なんか情緒おかしくなってない?」


 笑ってくれてる。まだ許される範囲内だったか……危ねえ。なんだか姫嶋かえでの女の子としての人格が表に出やすくなってないか? まさかこれも乗っ取り!?

 ……なんてアホなことあるわけないか。


「す、すみません。嬉しくてつい」

「あはは、いいのよ。私も会えて嬉しい。もう体は大丈夫なの?」

「はい。ご心配お掛けしました」

「本当にもう、びっくりしたわよ」

「優海は真っ先にお前の病室へ見舞いに来たんだぞ」

「え?」

「ちょっとぷに助! それ言わないでよ!」

「優海さん、スレイプニルです」

「え? どういうこと?」

「んー。実はね、私もライブ会場にいたの」

「えええええ!?」


 すごく恥ずかしそうに告白する優海さん可愛すぎだろ!


「もしかして、HuGFのファンなんですか?」

「ていうか、その……」

「かえでがメンバーとして参加するという噂を聞きつけてな、絶対見に行くと張り切っておった」

「それで……かえでちゃんが刺されたの見て、居ても立ってもいられなくて、すぐに病院に問い合わせて病室に……」


 じゃあ、目が覚める前に来てくれてたのか。てっきり最初は陽奈だとばかり。


「ありがとうございます。優海さん」

「……もぅ」


 顔を赤くしてバラしたぷに助をポコポコ叩く。


「でも本当に良かった。キュアオールで治ったのは分かってたけど、このまま目が覚めないんじゃないかって不安だったから」

「すみません」

「それで、退院したら学校の寄宿舎に行っちゃったでしょ? このままだともう会えないかも知れないから、新人研修なんて理由付けして呼んでもらったの」

「そうだったんですか。あ、そうだ。優海さんには教えておこうかな」

「なーに?」

「今度、三ツ矢女学院でミニライブをすることになったんですよ。サプライズなのでまだ関係者以外は誰も知りません。よかったら優海さんも来ませんか?」

「え? え!? い、いいの!?」

「はい! 東山さんと校長先生には話しておきますので」

「かえでちゃん大好きー!!」

「うわ! 優海さん!?」


 抱きつかれて押し倒されてしまった。

 男の姿なら押し倒されるなんてないだろうが、姫嶋かえでは背低いし体重軽いから女の子相手にも簡単に押し倒されてしまう。


「ありがとう! 絶対行くね!」

「はい。待ってますよ」

「あー、ゴホン。そろそろ新人が来るぞ」

「あっ!! ごめんね、すぐ準備するから!」

「私も手伝います!」

「まったく、こんな調子で大丈夫か……」



 To be continued→

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