第169話 ランク報酬
北見校長に今日の報告と、
確かに良い機会だ。
本部の会議室へ行くと、すでに多くの
「すごい……」
「ハッ! これだけ集まると壮観だな」
「でも、ほぼ全員が集まったら魔物への対処はどうするんですか?」
「こんな会議、何時間もやるわけじゃねーんだから、100キロメートルエリア担当がなんとかしてくれんだろ」
そんな大雑把な……。
「おや、生島殿。お主が10キロメートルエリア担当を連れているとは珍しい」
「狭山か。――こいつは
「相変わらず生島殿はキツいでござるなぁ」
はっはっは、と剣呑に笑う。スラリと背が高く、長い黒髪を一つ結びにしての和装は大和撫子を思わせる。言葉遣いはそれっぽいが、確かに忍者というイメージは薄い。
「して、そちらは?」
「あ、挨拶が遅れました。姫嶋かえでと言います!」
「姫嶋……。ああ、技能試験で派手に暴れてた子でござるな」
「えっ。見てたんですか……」
「はっはっは、若い子はあれくらい元気があったほうが良いでござるよ」
「てめぇも十分若ぇだろうが」
「ところでお主も口頭伝達でござるか?」
「あん? ああ。
「拙者のところにも。なにやらただ事ではなさそうでござるな」
《さて、集まったか?》
「あ、阿山本部長」
《今回はまず、魔物のランク基準について話がある。技術班の山田より説明がある》
阿山本部長が紹介すると、相変わらずのヨレヨレ白衣で壇上にあがる。
《どうも〜、ご紹介に預かりました山田ですぅー。皆さんのご活躍は大変素晴らしい。そのおかげで魔物のデータが多く集まりましてぇ、今回の新基準を実現するに至りましたぁ。
ん? おかしいな。俺のアナライズデータにもすでにあったぞ。ミスって送ったのか?
《新基準と言いましても単純なものでぇ、ランクAにだけプラスマークが追加されてますぅ。無印のランクAは10キロメートルエリア相当、A+は50キロメートルエリア、A++は100キロメートルエリア相当という具合ですね。以上です》
「え? それだけ?」
《
「ハッ! なにやらきな臭くなってきやがったな」
《新基準を作った目的はもう一つありましてねぇ。以前から阿山本部長に頼まれていた、ランク報酬の新設ですぅ》
「ランク報酬?」
報酬というワードに会議場がザワつく。
《今までは浄化によるポイント、コア回収によるポイントの2種類でしたがぁ、浄化ポイントはぶっちゃけ少ないしぃ、コア回収は難易度が高過ぎるという意見が寄せられていたようでしてぇ、
それって技術班で対応できるんだ……。
《それで調べたところぉ、魔物の浄化報酬については天界によって管理されておりますがぁ、コアの回収については50年ほど前に
なるほどな。あくまで管理は天界だが、申請が認められさえすれば魔法少女のシステムに機能を追加できるってことか。
《前例があるのなら話は早い。というわけでぇ、ランク報酬の案を天界に申請したころ先日承認されましたぁ。それを受けて我が技術班は、より分かりやすい新基準ランクの実装とランク報酬を新設することになったわけですよぉ》
《ありがとう山田。さて、諸君が気になっているのはやはり報酬の中身だろう。ランク報酬としては次のようになっている》
・ランクA++ 100,000ポイント
・ランクA+ 15,000ポイント
・ランクA 3,000ポイント
報酬を見てさらにザワつく。そりゃそうだ。特にランクA++の報酬は度肝を抜かれた。
「10万ポイント!?」
「それって、実質的にランクA++を倒せばキュアオール貰えるようなものじゃ!?」
そう、俺が散々お世話になったキュアオールがランクA++を倒すだけで手に入るようになる。流石に今の俺には遠すぎるけど、それでも
《なお、ランクA++の報酬にだけは制限が設けられた。月1回のみの報酬で、3ヶ月連続取得した場合は半年間報酬は無しになる》
制限について一瞬ザワッとしたが、すぐに落ち着いた。3ヶ月連続で30万ポイントだ、十分過ぎる。それに間を空ければ……。
《ああ、それと小狡い奴は間を空ければ実質的に無制限と考えるだろうが、年間に5回。50万ポイントが上限となっている。3ヶ月連続の報酬停止はやりすぎのペナルティだと思えばいい》
ははは! と笑いが起こる。流石にそんな甘くはないか。
それでも、ランクAを浄化するだけで3,000ポイントは美味しすぎる。本気で魔法少女を本業にしたくなる。
《今回、口頭伝達で招集を掛けた意図は理解してもらえたと思う。報酬は本日分から始まり、ポイントは明後日の朝方にまとめて振り込まれる。当面は
ははは! と再び笑いが起きる。
《以上、解散!》
集められた時は何事かと緊張感ある会議だったが、報酬の話を聞いた皆の顔は明るい。
「きな臭いと思ったら、こりゃあいいこと聞いたな!」
「そうでござるな。修行が捗るでござるよ」
「修行?」
「ああ、こいつは魔法少女の仕事のこと修行っつってんだ」
「な、なるほど……」
「それにしても惜しいなぁ、今日は姫嶋もけっこう働いてくれたのによ!」
「いえ、そんな」
「では、お主のポイントから少し分けてやれば良かろう?」
「おお! そういやそんな機能があったな!」
「そんな、いいですよ!」
「遠慮すんじゃねぇよ! 振り込まれたら姫嶋に半分くらい分けとくからよ!」
「半分も!?」
「それくらい当然だろ? あたしはポイントなんて困ってねぇからよ。気にすんな!」
「あ、ありがとうございます」
「良かったでござるな」
「はい……恐縮です」
「姫嶋殿はもっと堂々としておれば良いでござるよ」
そう言って頭をなでなでしてくれた。なんか嬉しい。
「では、拙者はこれにて」
「おう、またな」
「あ、私もそろそろ戻らないと」
「そっか。そうだ、北見さんに言伝を頼まれてくれねぇか?」
「いいですけど、なんて?」
「ありがとうございました。ってよ」
「えっ、それだけでいいんですか?」
「おう! またなんかあったら声掛けろや」
「はい、ありがとうございました!」
と、帰ろうとして山田に「姫嶋氏ぃ〜」と呼び止められる。
「山田さん? なんですか?」
「実はぁ、姫嶋氏の魔法の杖にも新基準のデータ送ってあるんですよぉ」
「やっぱり!」
「フフフぅ、さすが気づいていましたかぁ」
「てことは、まさか報酬も!?」
「いいえ、残念ながら新基準データだけですよぉ」
「そ、そうですか」
「姫嶋氏に送ったのはぁ、ちょっとしたテストなんですよぉ」
「テスト?」
「姫嶋氏は10キロメートルエリア担当でありながら
なるほどな、要するにうってつけのテスターとして選ばれた。というわけか。
「そういえば100キロメートルエリア担当の人たちはランク報酬について知ってるんですか?」
「もちろんですよぉー。100キロメートルエリア担当というのは魔法少女の最高位なだけあってぇ、そういった機密情報は一番に伝えられます。時には上層部より優先的に情報が貰えることもあるんですよぉ」
「いわゆる特権というやつですか。私も早く
「まぁ、50キロメートルエリアなんてあっという間になれますよぉ。がんばってくださいねぇ」
「はい! ありがとうございます!」
新基準によって戦いやすくなり、ランク報酬という新たなモチベーションもできた。早く50キロメートルエリア担当に昇格しよう!
To be continued→
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