第160話 私のこと、信じられませんか?
陽奈は拉致されたわけでも、裏切ったわけでもなく、魔物に操られていた。だとすると十中八九ミューラという魔物だろう。
だが目的はなんだ? 陽奈を操ってなにをしようとしている?
『では、これより大規模な探索魔法を展開します。各位は戦闘態勢を取ってください』
『了解!』
「分かった!」
「いよいよ廷々さんの指揮が始まるんですね!」
「うん。もう大丈夫だ」
廷々の探知能力は魔法少女の中でも群を抜いている。なんせぷに助の結界を
『……痕跡を見つけました。御坂さん、真島さん、そこから東にある食堂の裏へ行ってみてください』
『了解!』
「早い! もう見つけたんですか!」
水鳥は興奮を隠しきれないでいた。そして俺も驚いていた。
確かに紫の能力はすごい。それは以前から知っていたが……またさらに腕を上げたのか。
「これはまた、心強くなってくれたな」
* * *
「おや? 感知されたようですね」
ろうそくの明かりのみの薄暗い部屋の中で、魔物は薄ら笑みを浮かべる。
「どうやら、有能な魔法少女が加わったようですね。この学院の人間だと思いますか?
「いいえ。三ツ矢女学院にも有能な魔法少女は数多くいますが、
「ということは、
「いえ、それは考えにくいと思います。三ツ矢女学院は自立を重んじているため治外法権のようになっており、余程のことがない限り
「なるほど、それは知りませんでした。つまり、
「はい。おそらく」
「ほう。まあいいでしょう。私の計画にはなんら支障はありませんし、どれだけ有能な魔法少女であろうと、探索魔法だけでここを特定することは不可能なんですから」
* * *
『こちら御坂! 魔法の残滓が微かにありました!』
『他には?』
『特にありません!』
『あー、近場に池がありますねー』
「池? そうか、それだ! そこに落ちて全身濡れてしまったんだ!」
『なるほど、かえでさんの推理通りですね』
『ええ。しかし、ここまでですね……』
そうだ。陽奈の痕跡が分かっただけでも進展はあった。だが他に痕跡がなければ、これ以上の追跡は不可能だ。
「くそ、ここまでか……」
紫の力を借りても駄目か……。
〈なにが、ですか?〉
「え?」
個別通信?
〈かえでさん。私のこと、信じられませんか?〉
紫……?
〈……いいや、信じてるよ。紫のこと〉
〈私も信じてますよ。かえでさんのこと、楓人さんのこと〉
嬉しいけど、いくら個別通信だからって俺の名前はマズイんじゃないか? ……いや、紫を信じるって言ったばかりだったな。
「姫嶋様?」
「ん? ああ、なんでもない。ちょっと考えごとをね」
「なにか秘策があるんですか!?」
どうして
「いや、そんな難しいことじゃないよ。ひょっとしてもう陽奈さんは学院外に出ちゃってるんじゃないかって」
「ああ、それはありませんよ」
「どうして?」
「この学院に結界が張ってあるのは御存知ですよね?」
「うん」
「この結界は、魔物の侵入を拒むのともう一つ、魔法少女の出入りも分かるんです」
「そんな機能まであるんだ」
かなり昔からあるってことは何十年も前の結界だろ? その当時にそんな高度な結界を作ったのかよ!
「はい。なので陽奈が学院を出たら分かるはずです」
「そうなのか……」
どうりで皆は学院の外に出た可能性を一切考えてないわけだ。
陽奈はまだ三
「紫、まだ秘策があるんだね?」
『秘策と呼べるほどのものではありませんが、ありますよ』
「オッケー、頼んだよ紫!」
『――縛陣・
縛陣には探索の術式もあるのか。
待てよ? 廷々家の術式は“防陣”と“縛陣”の大カテゴリで構成されてるという。じゃあ、あの技能試験の術式はいったい……。
「どんな魔法なんでしょうね? 森羅天眼って」
「ああ、紫のは魔法というより、術式だよ」
「え? 術式……ですか?」
「そう。あくまで術式だから、基となる魔法はあるんだろうけどね」
「じゅ、術式だけであんな魔法のようなことが可能なんですか……」
うん、まあそうなるよね。
『見つけました』
「来たか!」
「え? えええ!? もうですか!?」
「行くよ、水鳥!」
「え、あっ、はい!」
待ってろよ、陽奈!
To be continued→
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