第144話 身を焦がす想い
姫嶋と別れた陽奈は
「姫嶋かえで……」
最初、スレイプニルから聞いた印象からはかけ離れてる――。
* * *
「姫嶋かえで?」
校長先生から呼び出された陽奈が校長室に入ると、そこにはスレイプニルと魔法少女が3人いた。
「うむ。とある事情で三
「ほとんどって、そんなこと許されるんですか?」
不公平感を訴える陽奈の目を真っ直ぐ受け止める校長は「今回はかなり複雑で特殊なケースなの。理事長ともお話して引き受けることにしたわ」と返す。
「どんな子なんですかー?」
おっとりとした雰囲気の、金髪三つ編みの真島乃愛が訊ねる。
「腰ほどある栗色の髪と大きな瞳の可愛らしい子よ。背はちょうど乃愛さんと同じくらいね」
「いいなー、可愛いんだろうなー」
「何回か学校には来る予定だ。その時にでも会えばいいだろう」
「本当ですかー?」
「うむ。いつになるかは分からないがな」
「それで、諸事情というのは一切が機密なのですか?」
雰囲気も声のトーンも落ち着いていて大人びた青髪ショートの風間水鳥の問いにスレイプニルは、「ふむ……」と、少し考える。
「通常とは異なる経緯で魔法契約を結んでしまってな。現在は5キロメートルエリアを担当してもらっている。魔法少女としてはまだお前たちのほうが格上だ」
「それと、彼女にはお仕事のほうもお願いしようと思っているわ」
「――お仕事?」
「痛い! なにするの水鳥!」
「こんな時に隊長モードに入らないでください」
「え? ああーごめんなさい。お仕事って聞くとつい……」
「いいんですよ。あなたのお仕事に対する熱心な姿勢は大変高く評価していますよ」
「ありがとうございます! ところでその助っ人はいつ来るんですか!?」
「お前は話を聞いておらんかったのか。いつ来れるかは分からん。あくまでまだ予定だ」
「そうですか! 分かりました!」
「そういうわけだ。その時が来たら色々とサポートしてやってくれ」
「「分かりました!!」」
* * *
スレイプニルの話では、確かに「まだ」私たちが格上だと言っていた。でもあんなに強い器とは聞いてない。
前に助けてもらった時に見せられた卓越した技術と、底が見えない膨大な魔力。この前の試験で10キロメートルエリア担当に昇格したそうだけど、遅いくらいだ。
あの器なら50キロメートルエリア……いや、100キロメートルエリア担当だって狙える。
それに、例の事件で姫嶋かえでが
熱狂的な姉のファンの狂気から姉を守り、その存在と勇気と美談があっという間に世界中に知れ渡った。
「魔法少女のエリートでトップアイドルの一員? なによそれ、どんなチート人生よ……」
私は常に姉の影だった。有栖川グループの孫娘。同じ肩書きなのに姉とは天と地の差があった。
姉は幼い頃から天性のスターで、私には何もなかった。だから私は魔法少女の才能があると知って飛びついた。どんなに危険だろうと魔法少女として成功してみせると決意した。
それに、大きな差があろうと大好きな姉を魔物から守れることが、たまらなく嬉しかった。
「それなのに……」
知ってしまった。知りたくなかったことを。
10キロメートルエリア担当になれて、がんばれば50キロメートルエリア担当にもなれるかも知れない。そう思っていたのに……。
「……わたしは……!」
嫉妬した。それも激しく。憎悪にも似た黒い感情が自分の中にあるとは思わなかった。
可愛くて、強くて、優しくて……。遠くの存在なら良かった。でもサポートする側としてあの輝かしい存在の近くに居続けないといけない。
「うっ……うぅ……!」
太陽は、近すぎると身を焦がす。あんなにも可憐で苛烈な存在は、私にはもう直視できない……!
「フフフ、いいですねぇ、その身を焦がすようなドス黒い想い」
「――! 誰!?」
突然聞こえた男の声。まったくなんの気配もしなかった。しかも今は
「どこにいるの!?」
注意深く周りを見ると、木の陰に一人の男性が立っていた。数少ない男性教師だ。
「先生? ……いえ、あなた先生じゃないわね。誰なの」
「ああ、失礼。自己紹介が遅れましたね。私はニューラ、世界を壊す者ですよ」
To be continued→
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます