第三章
第135話 有名人
――あらすじ。
サラリーマンと魔法少女の二足のわらじを履くことになった
ところが会場を守る戦闘中、
* * *
病院のベッドの上で座禅を組み目を閉じる。瞑想によって自分の内へと深く深く意識を落としていく。すると次第にぼんやりと器の形が見えてくる。
魔法少女の器。女の子には必ず備わっていて、その形は人それぞれ。魔法少女を魔法少女たらしめる魔力の源泉。入院前までは満ち満ちていた魔力も今は枯渇して器もなんだか古ぼけたように見える。
瞑想を始める前は器を感じることすら困難だったそれが、今はぼんやりとではあるが見えるまでには回復したようだ。
「ふぅ……」
瞑想を終えるとドアがノックされ、「入ってもいいですか?」と聞き覚えのある声。
「どうぞー」
「失礼します。瞑想がんばってるようですね」
「まあ、他にやることもないしな」
「でも、大事なことですよ」
目が覚めてからは毎日瞑想を行っている。薬の代わりに医者から教わったこの瞑想は魔力回復のための儀式みたいなものだ。通常は魔力が減っても自然回復し、使い切っても一晩寝れば9割方は回復するらしい。
ところが俺の場合は
医者からは、魔法少女にとって魔力は命に等しいもの。今回は奇跡的に助かったが次は命の保証は無い。と厳重注意を受けた……。
「ところで、担当医は女性しかいないのか?」
「そうですね。魔法少女の関係者は天界を除いては女子オンリーですから」
「そういえば、まだぷに助以外の天界関係者に会ったことないな。というかぷに助は男なのか?」
「どちらかといえば、オスでしょうか」
「なるほど確かに、あれはオスって感じだ」
「かえでさんは女子が苦手ですか?」
「うん、まあ……」
「私は平気ですか?」
「ああ、
「……女性として見られていない?」
「え? いやいや! そういうわけじゃないよ。あくまでも比較的大丈夫っていうだけで」
「そうですか」
「そ、それより!」
「はい?」
「訊きたいことがあるんだ」
トラクトノスと戦った後のことについて、俺がいったいどうなったのかを唯一の目撃者となった紫に尋ねる。
「私には当時の記憶が無い。でも覚えてる限り、あれくらいの魔力消費じゃ空っぽにならないはずだ。いったいなにがあったんだ?」
「――あの時、私は術式でフーノルザットを捕えました。あとは無力化するだけ……そう思った時でした。かえでさんが急に苦しみだしたんです」
「ああ、そこはぼんやりと覚えてるよ」
「
「でも、私は生きてる。なにがあったの?」
「……詳しくは私にも分かりません。かえでさんから黒紫の閃光が
「黒紫の閃光? その時に魔力が空っぽに……それで?」
「見た目も別人のように変わってしまって、……アレをかえでさんと呼んでいいのか、正直分かりません」
「ということは、まさか……」
「私も最悪の事態を想定しました。ですが、ローレスと異なる点が2つ。一つは魔法少女を狙わず魔物を
「私の記憶が戻ったのもそこだ。気づいたら目の前に紫がいた」
「はい」
「ローレスって魔物を攻撃しないの?」
「はい。これはローレスの大きな特徴ですね。
「なるほど。もしローレスなら目の前にいる紫や他の魔法少女を襲うはずだし、もう正気には戻れない……か」
「そうですね、ローレスとなった魔法少女が元に戻った例はありませんから」
「でも、可能性はあるんじゃないか?」
脳裏に浮かぶ新島の顔。もしかしたら……と淡い期待を込めるが、「残念ながら」と首を振る。
「そっか……」
そりゃそうだよな、俺が魔法少女になるずっと前から魔法少女は存在し続けてきた。ローレスについて研究しなかったはずがない。ぷに助ですら浄化するしかないと言ってたんだ……。
「紫の話をまとめると、私が全魔力を消費して別人のように変身した。ローレスかと思われたけど、魔物を攻撃したり正気に戻ったことでローレスとは違う
「そうですね、だいたいそんな感じ……なんですが、実はローレスではないと断定はできないんです」
「どうして?」
「ローレスにおいては未発見ですが、新種の可能性も否定できませんから」
「今までの常識が通用しない新たなローレスの可能性もあるわけか。でもそれは困ったなぁ……。発作的にローレス化する
「今回のような事態は、そうそうないと思いますよ」
「そうなの?」
「あくまで仮説ですが、恐らくは命の危機に
それに、かえでさんがそこまでのピンチになることは稀なので、大丈夫でしょう。フーノルザットは例外として考えたほうがいいです。――要するに、そこまで気にする必要は無いということです」
「まあ、それもそうだね」
「それよりも今、大変なことになってますよ」
「え? どういうこと?」
「こういうことです」
紫が見せてくれたスマホの画面には『彗星の如く現れたアイドル・姫嶋かえで、身を挺して有栖川彩希を守る!!』という見出しが踊り、当時の事件が大々的に報じられていた。
「これって……」
「かえでさん、今や世界的に有名人ですよ」
「……マジで?」
To be continued→
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