第130話 再現性
「皆さん注意して下さい。ランクAが一体来ます」
――ランクA・ゼビアス。
黒い飛竜のような中型の魔物。アナライズ情報によると魔法耐性が強いとある。今対応できるのは10キロメートルエリア2人だけ……。
「秋元さん、須山さん。対応お願いできますか?」
〈はい。行けます〉
〈やっちゃうよ〜!!〉
「ありがとうございます。気持ち程度ですが
攻撃と防御の魔法を掛けると、二人の身体がほのかに光る。
大剣を上手く操る秋元と、必中の長槍使い須山。魔法耐性がある魔物相手にはアタッカー、コンバット、マジカルの順で優位となるためゼビアス戦はアタッカーが鍵を握る。
「はあッ!」
秋元か大振りでゼビアスを動かすと、死角から須山が長槍で翼を穿つ。
「うーん、こいつ当てづらいなぁ」
それでもキッチリと役割をこなす須山に、秋元はすかさず魔物を誘導する。
紫がこの二人を対応に使ったのはアタッカーだからという理由だけではなかった。数十分の観察で見えてきたのは、10キロメートルエリアの中でもこの二人が群を抜いてセンスがあり、周りが見えていたからだ。
だからこそ、即興のコンビにも関わらず阿吽の呼吸でゼビアスを追い詰めていた。
「やあああアッ!!」
須山に気が逸れた瞬間を狙って真上から一閃。しかし力が足りないのか両断には至らなかった。
「くっ……!」
「沈んどけぇッ!!」
そこへ須山が術式を走らせた長槍を
「流石ですね」
「そっちもナイスー!」
「
「うん、なんかこう……静かに燃えるって感じする」
司令塔としてだけでなく、サポートとしても名を馳せる紫の実力を目の当たりにした二人は、改めて紫のことを尊敬したのであった。
* * *
「くそ……!」
誰だ。いったい誰が宿主なんだ!?
ライブが進むにつれて焦ってきた。フーノルザットが宿主を喰い破って出てくる予想時間まであと2時間弱。それまでに特定しないとHuGFの誰かが死ぬ。
セットリストは中盤になり、俺の出番が少なくなる。これはチャンスだ!
「メイプル、全力でスキャンするぞ!」
『分かりました』
計測によって魔力への理解度が深まったのか、より的確に魔力制御ができるようになり、時間を掛けてしっかりスキャニングすれば精度は大幅に上がる。さらにメイプルのサポートも加われば更に深く調べることもできる。
「スキャン開始!」
HuGFのメンバー全員を一斉にスキャンすると、それぞれの器が見えてきた。
「すごいな、器が分かるのか」
『今までのスキャンでは見えなかった器のディテールまでよく見えますね』
女性には魔法少女の器が備わっていると話には聞いていたが、こうして実際に魔法少女じゃない女の子の器を見るのは初めてだな。
……なんだか覗き見してるような気分になる。
『やはり今のところオールグリーンです』
「くそっ……ここまで精度上げても発見できないのか……」
この感覚……どこかで味わったことがあるな。問題を見つけようとして全然見つからない、この感覚……。
「あー、そうだ。デバッグだ」
特に再現性低いバグは本当に面倒くさいんだよなー、仮説立てて再現する条件を探らないといけないし……。それとメモリ破壊。どこで不正メモリアクセスが行われているのかを地道に検証しなきゃならんし。
――待てよ? 今回のこれもかなり再現性低くないか?
だってそもそも最初にメイプルが魔物の反応を拾ってくれたあの時から今まで一度も反応が無いなんて、いくらなんでもおかしい。
「メイプル、今までずっと監視はしてたんだよな?」
『はい』
「さっきの
『はい。誰からも反応は見られませんでした』
「全員か?」
『はい?』
「
『いえ、東山さんだけは――』
「それだ!」
俺たちは東山は寄生されてないと思い込んでたんだ!
スキャニングを東山に絞り全力スキャンする。すると――
「いた!」
器にくっつくようにして寄生しているのを見つけた。――と思うと消える。
「どこ行った!?」
『マーキングしたので追えます。岩清水さんへ移動しました』
「はぁ!?」
そういうことか! 魔法少女も一般人も関係なく人間から人間へ自由に移動できるからスキャニングを逃れていたのか! 最初に寄生したのが一般人のメンバーでも、その
〈こちらかえで。紫、聞こえる!?〉
〈こちら紫。どうしましたか?〉
〈フーノルザットを捕捉した! どうやら人間から人間へ瞬間移動できるみたいだ、東山から明音に移動した!〉
〈人間から人間へ? 情報ありがとうございます〉
〈どうすればいい? マーキングしてあるから追えるけど〉
〈助かります。――こちらでも確認しました。あとはお任せ下さい〉
〈え? いいの?〉
〈はい。代わりと言ってはなんですが、今動けますか?〉
〈今は出番無いから動けるよ。一応東山に確認しないとだけど〉
〈では、私がフーノルザットを封じる間にこちらの援護をお願いしてもいいですか?〉
〈もちろん!〉
〈ありがとうございます。では、始めますね〉
To be continued→
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