第111話 技能試験⑱ - 独自試験(廷々紫)1
「紫はこのあと?」
エキシビションのような遠的競技が終わると、各試験が再開される。どうやら試験の休憩を兼ねて試験官が交代でやってるらしい。
「はい」
「応援してるからね!」
紫はペコリとお辞儀して試験会場へ向かう。俺は歩夢とさっきまでいた観戦部屋へに戻った。
「そういえば、紫は試験内容見ちゃってるからやりやすいんじゃないの?」
「ところがそうは問屋が卸さないんだなー」
「どういうこと?」
「かえではアタシの試験見てたんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、見てれば分かるよ」
歩夢がそう言うので、楽しみにすることにした。
〈さあ! 次は
〈
鬱蒼と生い茂る草に高い木々。視界が悪く見通しが効かかない。
「ステージが違う!?」
「驚いた? 魔法少女によって調整が異なるんだよ」
なるほど、これは確かに見てたから有利なんてことは無さそうだ。
「でも魔物は同じなんだから……あれ? なんで動かないんだ?」
「
俺には分からなかったが、歩夢と解説者は分かったらしい。
〈おっと? 廷々さん動かない。これはどうしたのか!?〉
〈すでにワイヤートラップが張り巡らされていますね。下手に動くとトラップが発動してしまいます〉
〈なんと!? これは予想外! ワイヤートラップがすでにある状態でのスタートだ!?〉
* * *
「……」
――これはまた、やらしい調整してきますね。
二人の負傷者と魔物の位置はすでにレーダーで把握済み。私の場合は戦闘向きの魔法は数少ない。だから直ぐに縛陣で捕らえる予定だったのに……。
「なるほど、苦手を攻める。神楽さんらしい意地悪なステージセットですね」
つまり、今回の独自試験は機転とアイデア、いかに地力で戦えるかを測る試験。
「いいでしょう。私の全霊を以ってお相手致します」
* * *
「えっ!?」
実況も思わず「なんだこれは!?」と驚きの声を上げる。
紫が動いたと思うと、なんと周りにあるワイヤートラップ全てに攻撃した。
〈これはいったいどうしたというのか!? あまりの予想外スタートに自棄になったかー!?〉
〈いえ、これは――〉
あらゆる罠が発動して爆発やらなにやらで画面が見えなくなる。
何が何だか分からず混乱していると、歩夢はニヤリと笑う。
「紫を舐めちゃダメだよ」
爆煙が晴れると、そこには全く無傷の紫が立っていた。
〈こ、これはー!? あれほどの大量トラップを受けて無傷! まさかの無傷です!!〉
〈これは防陣ですね〉
〈防陣とは、なんでしょうか?〉
〈廷々さんはマジカルタイプの魔法少女の中でもかなり特殊でして、“陣”と呼ばれる結界術に似た術式を
〈あれは術式なんですか?〉
〈はい。といっても普通の術式とは違うので、他の人にはまず扱えません。廷々家の秘術と言えるかも知れませんね〉
〈そういえば、廷々家といえば女子が全員魔法少女という、いわゆる純血の魔法少女と呼ばれてますね。その血筋が為せる技ということなんでしょうか〉
〈廷々家に関してはここではコメントを控えたいと思いますが、あの“陣”という独特な術式は他では見たことも聞いたこともありませんね。廷々家の秘伝であることは間違いないでしょう〉
〈ちなみに、他にもそういった秘伝のような術式はあるのでしょうか?〉
〈ありますよ。先の試験で葉道さんが見せたカウントダウン・ブレイカーは阿山さんの秘伝です。なので今現在はこの二人しか使えません〉
〈あれは術式なんですか!?〉
俺もあれは魔法だと思っていた。あれが術式というのなら本当に可能性は無限大だな、自由度がハンパない。
〈カウントダウン・ブレイカーについての詳細な説明は省きますが、時間設定による破壊力の倍加。という術式です〉
〈なるほど、意外と単純なようにも思えますが、どうして非公開なんでしょうか?〉
〈とてもデリケートな術式だからだと思います。確かに倍加は強力ですが、そのぶん反動も大きく連発ができないと聞きます。それに失敗した時のリスクも大きいとか〉
〈つまり危険な術式なので非公開にしていると〉
〈そういうことですね〉
なるほどな、危険な術式や漏らしたくないノウハウがある場合は非公開にできるのか。
〈鉄壁の防御力を誇る防陣によって、力技のような形でトラップを攻略した廷々さん! ここからどう攻めるのか!?〉
To be continued→
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